現在の花粉飛散量のモニタリングには課題が
熊本大学は3月15日、飛散花粉の種類と量を化学的に検知することに成功したと発表した。この研究は、同大大学院先端科学研究部の戸田敬教授と佐伯健太郎大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、科学誌「分析化学」の「大気環境と分析化学」特集号(6月号)に掲載される。
画像はリリースより
花粉症は、多くの日本人が悩む健康被害であり、花粉飛散の予測や計測は社会的に重要な技術となっている。現在用いられている花粉飛散量のモニタリングは、屋外に設置したプレパラートに付着した花粉を顕微鏡で数えたり、花粉によるレーザー光の散乱を計数したりするものだが、前者は多大な労力が必要であり、後者では花粉以外の粒子もカウントしていたり、花粉の種別がわからなかったりと、双方ともに課題がある。
そこで研究グループは、「花粉固有の化学物質を特定すれば、飛散花粉の同定と定量について化学的にモニタリングが可能で、より確かな情報が得られるのではないか」と考え、花粉に含まれる化学物質の調査に着手したという。
花粉の飛散状況に応じた「花粉マーカー」の増減を確認
今回の研究では、「加熱脱着-ガスクロマトグラフィー/質量分析」という手法によって、スギ・ヒノキ・アカマツ・クリなどの花粉に含まれる化学物質を分析し、花粉の指標となりうる候補物質の探索を行った。その結果、すべての花粉に共通した化学物質があるのに加え、それぞれの花粉に固有の物質がいくつかあることが判明。これらの物質を「花粉マーカー」とした。
つぎに、大気に浮遊する粒子状物質をフィルターで捕集。フィルターを加熱して出てきた化学物質を調べると、花粉のシーズンに花粉マーカー物質が現れており、その化学物質は花粉の飛散状況に応じて増減していることも観測できたという。
今回の研究成果について、研究グループは、「今後さらなる検証を重ねていけば、捕集と分析を自動化し、1時間毎の花粉飛散について花粉の種類と飛散量双方の、より正確な情報を提供することが可能になると期待される」と述べている。
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