多臓器不全などが発現するマダニ媒介性の感染症
富山化学工業株式会社は3月12日、マダニ媒介性感染症の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を対象とした抗ウイルス薬「ファビピラビル」の国内臨床第3相試験の患者登録を開始したと発表した。
SFTSは、SFTSウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染。感染後6日~2週間程度の潜伏期間を経て発症し、重症例では神経症状、出血傾向、多臓器不全などが発現する。国内では2018年1月31日までに318名の患者が確認され、うち60名が死亡している。西日本での発症が多く、マダニの活動が盛んな春から秋にかけて罹患する危険性が高まる。非常にまれではあるが、感染したイヌやネコからヒトに感染した事例も報告されている。
抗インフルエンザウイルス薬としては承認取得済み
ファビピラビルは、既に抗インフルエンザウイルス薬「アビガン(R)錠」として製造販売承認を取得している。富山化学が開発し、日本において、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効または効果不十分な新型または再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、同剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合に、患者への投与が検討される医薬品として、2014年3月に承認された。
同剤はウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐ。このようなメカニズムの特徴から、インフルエンザウイルス以外のウイルス感染症分野でも応用の可能性が高いと考えられている。SFTSにおいては、国立感染症研究所で行われた動物モデルでの基礎研究で同剤の有効性を確認。また、2016年6月から愛媛大学、長崎大学、国立感染症研究所が中心となり同剤を用いたSFTSを対象とする臨床研究を実施した結果、有効な治療法の開発につながる知見が得られたことが報告(⇒重症熱性血小板減少症候群に対するアビガンを用いた薬物療法の研究成果発表)されている。
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