40~69歳の男女約3万4,000人を2009年まで追跡調査
国立がん研究センターは3月8日、血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクに関する多目的コホート研究(JPHC研究)の成果を発表した。今回の研究は、1990年と1993年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所管内(2018年現在)に在住していた人のうち、ベースライン調査のアンケートに回答し、健診などの機会に血液を提供した40~69歳の男女約3万4,000人を、2009年まで追跡した結果に基づいて、血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクとの関連を調べたもの。
画像はリリースより
ビタミンDは、脂溶性ビタミンで、カルシウムとともに骨代謝において重要な役割を果たしている。近年の研究より、細胞増殖を抑えたり、細胞死を促進したりする作用により、がんを予防する効果があると考えられている。人を対象としたコホート研究においても、血中ビタミンD濃度が上昇すると、大腸がんや肺がんに罹患するリスクが低下する傾向が観察されていた。しかし、大腸がん・肺がん・乳がん・前立腺がん以外のがんや、がん全体を対象としたコホート研究は十分ではなかった。
研究グループは、男女約3万4,000人を対象に追跡調査を行い、研究開始から2009年までに、3,734人のがん罹患を確認した。これに対し、同じ約3万4,000人の中から、4,456人を無作為に選んで対照グループに設定。今回の研究では、がんに罹患する前の保存血液を用いて、血中ビタミンD濃度の測定を行った。血中ビタミンD濃度を男女別に4等分位(罹患者数が130未満のがんでは3等分位)に分け、さらに年齢・性別・喫煙・飲酒・身体活動・がん家族歴・糖尿病の既往・body mass index(BMI)などのがんと関連する要因を統計学的に調整。血中ビタミンD濃度が最も低いグループを基準とした。
肝臓がんの罹患リスクが有意に低下
その結果、血中ビタミンD濃度が2番目に低いグループから何らかのがんに罹患するリスクが統計学的有意に低下し、血中ビタミンD濃度が2番目に高いグループで最も低下していたことがわかった。
また、血中ビタミンD濃度が最も低いグループを基準に、最も高いグループのがん罹患リスクを部位別にみたところ、肝臓がんの罹患リスクが統計学的有意に低下。ほぼ全ての部位で、がん罹患リスクが上昇する傾向は見られなかったという。
今回の研究から、血中ビタミンD濃度が上昇すると、何らかのがんに罹患するリスクが低下することが明らかになり、今回の研究結果は、これまでの研究で示されているビタミンDのがん予防効果を支持するものと考えられるとしている。ただし、血中ビタミンD濃度が最も高いグループではがん罹患リスクのさらなる低下が見られなかったことから、血中ビタミンD濃度が一定のレベルを超えた場合、それ以上のがん予防効果は期待できない可能性があるとの見解を示している。
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