心血管イベント発生と個人の臨床因子との関係を定式化
国立循環器病研究センター(国循)は3月6日、心不全患者における退院後の心血管イベント発生と個人の臨床因子との関係を、数学的に予後予測モデルとして定式化することに成功したと発表した。この研究は、同センター研究開発基盤センター臨床研究部の福田弘毅医師、北風政史部長らの研究チームが、大阪大学産業科学研究所知能推論研究分野の鷲尾隆教授、北海道大学、九州大学と共同で行ったもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。
画像はリリースより
心疾患は日本人の死亡原因の第2位であり、特に急速な高齢化の進展などにより心不全患者が増加している。医療者が治療の指針とするガイドラインは、平均的な患者像を想定しているが、ライフスタイルの多様化などにより患者個々の病気のタイプや併存疾患、生活習慣など実際の患者像は多岐におよぶため、今後は患者個別の病態に応じたオーダーメイド医療の実現が一層求められると考えられる。
実際の心血管イベント発生までの期間を高精度に予測可能
今回、研究チームは、数多くの患者因子から個別の予後を推定する数学的モデルを作成し、実際の医療現場に応用可能かを検証した。まず、国循病院に2007~2009年に心不全症状増悪のため入院し、その後退院した患者167名について心疾患による死亡や再入院などの心血管イベントが発生するまでの期間と、年齢や性別、基礎疾患、検査所見、投薬内容などの患者因子50項目を調査し、これらの各因子の心血管イベントに対する寄与度を求め、心血管イベントが発生する時期を予測する数学的モデルを構築した。
さらに、北海道大学、九州大学と共同で、2013~2016年に心不全により入院した患者213例について、同モデルから予測される心血管イベント発生までの期間と実際の心血管イベント発生までの期間を比較する前向き研究を実施。その結果、同モデルは実際の心血管イベント発生までの期間を高精度に予測できることが明らかとなった。
今回構築されたモデルの活用により、心血管イベント発生を回避するために患者個々に最適な治療方針や外来スケジュールの決定などが可能になることが期待される。また、今回の研究では、心不全症例に特化したモデル作成を行ったが、研究を応用して他の疾患についてもモデル化が可能になることで医療のオーダーメイド化がより進むと考えられる、と研究チームは述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース