体外受精での出生数は年間5万人を超え、増加傾向に
東京医科歯科大学は3月5日、着床前のヒト胚の遺伝子発現を詳細に解析し、胚の遺伝子発現プロフィールと両親の年齢との関係を明らかにしたと発表した。この研究は、同大難治疾患研究所エピジェネティクス分野の幸田尚准教授と、同大大学院医歯学総合研究科生殖機能協関学分野の久保田俊郎名誉教授の研究グループが、関連施設との共同研究で行ったもの。研究成果は、「Scientific Reports」オンライン版で発表されている。
日本における体外受精での出生数は、2015年度には年間5万人(20人に1名)を超え、増加傾向にある。安全な体外受精を行いながら臨床妊娠率を向上させるためには、環境要因や体外受精の要素技術が、胚発生や胚の遺伝子発現にどのような影響を及ぼすかといった基礎的なデータの蓄積が重要だと考えられていた。
良好胚の鑑別を同定する開発的研究へ
研究グループは、ヒト着床前胚の全遺伝子の発現レベルを胚ひとつずつ解析し、さまざまな因子との関係を詳細に解析した。その結果、着床前胚において両親の年齢、特に母親の年齢が胚の一群の遺伝子発現に影響を及ぼす因子であることが明らかになったという。
一方、母親年齢の上昇に伴って発現が低下する遺伝子として、減数分裂時の染色体分配に重要な遺伝子が多く含まれていた。これまで、母親の年齢が上がるにつれて胚の染色体異常が増えるため、結果として妊娠率が低下することが知られてきた。今回の研究の成果は、その機構を明らかにするための重要な発見であると考えられる。今回の研究で同定した母親年齢の上昇に伴って発現が低下する遺伝子は、不妊治療において良好胚の鑑別を同定する開発的研究へつながることが期待される。
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