両剤併用の安全性および有効性などを評価
国立がん研究センターは3月2日、進行性または移転性固形がん患者を対象とした、腫瘍溶解ウイルス製剤「テロメライシン(R)(OBP-301)」と、抗PD-1抗体薬「ペムブロリズマブ」の併用療法に関する医師主導治験(第1相試験)を開始したと発表した。同試験では、両剤を併用した際の安全性および有効性などの評価を行う。
腫瘍溶解ウイルスは、正常な細胞ではほとんど増殖せず、がん細胞内のみで特異的に増殖するウイルス。増殖によってがん細胞を破壊し、その際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染し、破壊されたがん細胞の断片が、がんが宿主する免疫を活性化することで、投与した部位以外のがんが縮小することが期待されている。現在はアデノウイルス、ワクシニアウイルス、レオウイルス、単純ヘルペスウイルス1型などから作られた腫瘍溶解性ウイルスの開発が行われている。
ヒトアデノウイルスを遺伝子改変したテロメライシン
テロメライシンは、風邪ウイルスのひとつである5型ヒトアデノウイルスに、細胞ががん化した時に活性化する酵素の遺伝子の一部を遺伝子改変によって組み込んだ、腫瘍融解アデノウイルス製剤。同剤の腫瘍溶解作用がCTL活性(細胞傷害性T細胞活性)を誘導することによる腫瘍免疫増強効果が期待される。2006年アメリカで実施した進行性固形がん患者を対象として行った単剤投与による臨床試験において、投与部位での腫瘍縮小効果などの有効性が認められている。
一方のペムブロリズマブは、PD-1の伝達経路を阻害する分子標的薬のひとつである抗体医薬品。活性化T細胞上のPD-1に結合することにより、がん細胞上のPD-L1およびPD-L2の結合を阻害することでPD-1伝達経路を阻害し、がんを攻撃する免疫系の再活性化を促し、がんに対して有効であると考えられている。これまでにメラノーマ、非小細胞肺がん、胃がん、頭頸部がんなど多くのがん腫において、その抗腫瘍効果が確認されており、現在では30以上のがん腫において開発が進められている。
▼関連リンク
・国立がん研究センター プレスリリース