新潟県阿賀野市の中学生を対象とした研究で
新潟大学は2月23日、新潟県阿賀野市の中学生を対象とした研究において、心肺持久力と筋力の両方が低い中学生では、代謝異常リスク(生活習慣病あるいはメタボ傾向)を有する可能性が相乗的に高くなることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科の曽根博仁教授、森川咲子客員研究員、同健康寿命延伸・生活習慣病予防治療医学講座(阿賀野市寄附講座)の藤原和哉特任准教授らと阿賀野市の共同研究によるもの。研究成果は「Pediatric diabetes」に掲載されている。
青少年期の代謝異常は、成人以降まで持ち越されることが多く、将来的に動脈硬化を促進させることから、早期発見と生活習慣改善が望まれている。しかし、この世代は血液検査や血圧測定を含む健康診断を受ける機会がないため、発見されず放置されているのが現状だ。
大人では心肺持久力が高いことが、生活習慣病予防に重要であることは知られているが、最近、筋力も生活習慣病と関連することが注目を浴びている。一方、青少年においては、これら複数の体力指標と生活習慣病指標との関連を調べた研究は少なく、特に心肺持久力と筋力との組合せが、どのように生活習慣病指標と関連するかは明らかになっていなかった。
心肺持久力と筋力がともに低いと代謝異常のリスク約4.3倍
新潟大学医学部と阿賀野市とは、市民の健康寿命延伸を目的としたプロジェクトの一環として中学生生活習慣病予防事業を行っており、中学2年生に対して血液検査や血圧測定を含む健康診断や生活習慣実態調査を実施している。今回、健診と体力テストを受け、研究に同意した13~14歳の993名(男子523名、女子470名)を対象に、体力指標と代謝指標との関連を検討した。
体力テストの心肺持久力(20mシャトルラン)、上肢筋力(握力)、下肢筋力(立ち幅跳び)、筋耐久力(上体おこし)の成績と、健康診断の結果との関連を重回帰分析で検討したところ、肥満度の指標となるBMIは、心肺持久力、上肢筋力、下肢筋力が低いと統計的に有意に高くなり、血圧および動脈硬化促進性の血中脂質である「non-HDL-C」(非HDLコレステロール)は、心肺持久力が低いと有意に高くなったという。
画像はリリースより
さらに、体力指標同士を組み合わせて解析したところ、心肺持久力と上肢筋力が共に高い人と比べて、両方とも低い人では代謝異常リスクを有する可能性が相乗的に約4.3倍まで有意に高まることが明らかになったという。同様に、心肺持久力と下肢筋力が共に高い人と比べても、両方とも低い人では代謝異常リスクを持つ可能性が、約3.2倍有意に高まることが判明。しかし、上肢筋力や下肢筋力が低くとも心肺持久力が中程度以上であれば、代謝異常リスクである可能性は、心肺持久力も筋力ともに高い人よりは高まらなかったとしている。
今回の成果について、研究グループは「心肺持久力に加えて上下肢の筋力を評価することにより、中学生の代謝異常リスクをさらに細分化して評価し、重点指導対象者を絞り込むことができるようになった」と評価している。
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・新潟大学 プレスリリース