COPD患者の健康状態に影響する肺過膨張
スイスのノバルティス社は2月22日、肺過膨脹のある慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者を対象とするCLAIM試験において、「ウルティブロ(R)ブリーズヘラー(R)」(一般名:インダカテロール/グリコピロニウム臭化物110/50mcg)の1日1回投与がプラセボと比較して、心機能(主要評価項目)および肺機能(副次評価項目)を有意に改善することが示されたと発表した。この結果は、「Lancet Respiratory Medicine」に掲載されている。
COPDは、全世界で約2億1000万人が罹患しており、死亡原因の4位となっている。COPDは進行性疾患であり、生命を脅かすおそれがあるとともに、息切れを引き起こすことで、活動制限や運動能の低減など患者の身体機能やQOLに壊滅的な影響を与える。また、肺過膨張は、エアートラッピングや気道の閉塞によって起こり、COPD患者の多くで見られる。過膨張を起こすと、息切れが増大し、COPD患者の健康状態に影響する。
ウルティブロ ブリーズヘラー110/50mcgは、1日1回吸入するLABA/LAMA配合剤。COPDの成人患者に対する症状緩和用の気管支拡張維持治療薬として欧州連合(EU)で承認されているほか、ラテンアメリカ、日本、カナダ、スイスおよびオーストラリアを含む世界100か国以上で使用が承認されている。現在、標準治療薬として広く使われているサルメテロール50mcg/フルチカゾン500mcg(SFC)や非盲検チオトロピウム(18mcg)に比べ、気管支拡張を統計学的有意に改善することが臨床試験で明らかにされている。
心機能・肺過膨脹に対するLABA/LAMAの効果を初めて検討
CLAIM試験は、肺過膨張のあるCOPD患者を対象に、ウルティブロの14日間の投与が心機能および肺機能におよぼす効果をプラセボと比較した、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、単施設、2期間クロスオーバー試験。心機能および肺過膨脹に対するLABA/LAMAの効果を検討する初めての試験だ。計62名の患者が参加し、うち57名が両投与期間を完了した。試験に参加したすべての患者が中等症からきわめて重症のCOPDで、肺過膨脹が確認されていた(予測残気量>135%)。
主要評価項目は、ウルティブロを1日1回14日間投与した場合の、MRIで評価される左室拡張末期容積(LV-EDV)に対する効果を示すこと。副次的評価項目には、残気量(RVol)、努力性呼気1秒量(FEV1)および努力性肺活量(FVC)で評価した肺機能パラメータに対する効果が含まれた。また、心臓に関する評価には、右室拡張末期容積(RV-EDV)、左室および右室1回拍出量(LV-SVおよびRV-SV)、左室および右室収縮末期容積(LV-ESVおよびRV-ESV)、心係数(CI)が含まれた。なお、同試験に日本人の患者は参加していない。
試験の結果、ウルティブロによる14日間の治療が、肺過膨脹の軽減および心機能の改善につながることが示され、主要評価項目を達成。また、探索的評価項目として検討した健康状態および息切れ(呼吸困難)の改善という、臨床的に意義のあるベネフィットにつながりうることが示されたという。また、同試験において、ウルティブロは忍容性に優れ、プラセボと同等の安全性プロファイルを示したとしている。
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・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース