■研究最前線と将来を展望
日本薬学会第138年会(組織委員長:向智里金沢大学副学長・理事)が3月25~28日の4日間、金沢市の石川県立音楽堂、金沢市アートホール、ANAクラウンプラザホテル金沢など11施設を会場に開催される。1996年の第116年会以来、22年ぶりの金沢開催となる今回の年会テーマは「次世代に向けた創薬・医療イノベーションの今」。組織委員長の向氏は「薬学教育6年制導入から10年が経過し、研究分野でもAIやIoTなどの言葉がキーワードとなっている。次世代の創薬、薬物治療、医療の革新的技術を中心に薬学関連研究の最前線と将来展望について議論し、さらに進展させていくという意味を込めてテーマを掲げた」と話す。
年会プログラムも会頭講演、国内外8人を招聘しての特別講演、20人の受賞講演のほか、特別企画ワークショップ2件、シンポジウム(一般70件、大学院生3件、理事企画2件、国際交流2件)、ランチョンセミナー19題、一般演題(口頭1017題、ポスター2579題)、機器展示、市民講演会など多彩な企画を展開する予定である。
特別企画では、「AMED主催創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業(BINDS)ワークショップ」と、「健康寿命増進を実現できる未来医療のあり方を考える」とする金沢大学が企画したワークショップを設置した。それぞれテーマに掲げる「創薬」と「医療」のイノベーションに沿った内容で、BINDSの周知と、文部科学省プロジェクト『未来医療研究人材育成事業』の各大学の取り組みの紹介が行われる。
年会では、次世代の研究者の育成にも注力する。例年通り若手研究者によるシンポジウムのほか、恒例の大学院生によるシンポジウムも開催。大学院生の優れた口頭発表やポスター発表には優秀賞を授与する。このほか、「学部4年生以下は学会参加費無料でランチョンセミナーの参加も自由とした」(向氏)という。また、市民講演会は「漢方薬 消滅の危機と国産化の試み」として、地元石川県での薬用植物国産化の研究の一端を紹介する。
今年会の運営上の特徴としては、会場をほぼ金沢駅周辺施設を活用して集約した点を挙げることができる。「金沢駅を出るとすぐに会場にアクセスでき、各会場とも地下通路でつながっているため雨天時の会場移動も支障がない。金沢以外に宿泊しても不便を感じないような画期的な運営を企画した」とする。また、ポスター会場は金沢駅を象徴する「鼓門」「もてなしドーム」の地下にあるイベント広場で開催する。このため「一般市民や観光客などが行き来する空間で、薬学研究者による活気溢れる討論を展開することで、薬学会のアピールにもつながる」と期待する。
年会参加者は、96年開催の年会並みに「1万人規模」を想定。向氏は「年会を通じて、薬学領域の教育・研究に携わる研究者、教育者、薬剤師、薬学生などが、自らの専門分野にとどまることなく、広く相互に理解を深め、薬学の教育・研究の全体像を把握することができれば、創薬や医療技術から教育システムに至る幅広い領域で、革新的な展開がもたらされると期待している」と強調。薬学領域の教育・研究・医療における次世代に向けた一層の発展と飛躍に向けて、積極的な年会参加を呼びかけている。