日本版GDP(医薬品流通基準)ガイドライン(GL)策定に向けた厚生労働科学研究「GDP国際整合化研究班」メンバーの小山靖人氏(塩野義製薬信頼性保証本部品質保証部専任次長)は22日、大阪市内で開催されたメディカルジャパン2018のセミナーで「わが国のGDPの動向と製薬企業に求められる課題」をテーマに講演。GLについて「早ければ今年6~7月までに研究班としてGLを最終化して厚生労働省に提出する予定で、来年度中には発出されるのではないか」との見通しを示した。
現在、GDPは欧米など各国で整備、改正が進んでいる。国内では2015年の「医薬品産業強化総合戦略」の医療用医薬品の安全性確保策として、PIC/S-GDPに準拠した日本版GDPガイドライン策定の検討が示され、16年度から研究班でGL素案の検討を進めている。16年度には、PIC/S-GDPの日本語訳のほか、これに準拠したGL素案を策定。17年度にはGL素案を適用した際の課題についてアンケートを実施。「その結果を踏まえ、素案をアップデートして日本版GDPガイドラインの最終化を図っていく」という。
小山氏はGDPの目的として、▽流通過程の製品の温度管理など品質の確保▽業務委託する配送業者の管理やセキュリティ確保▽偽造医薬品の正規流通過程の進入防止――などを挙げた。その上で「わが国ではGDPは法令化されていないが、世界の先進国でGDPがないのは日本だけ。整備が急がれるところ」と言及した。
製薬企業におけるGDPの課題として「国内には海外のGDPに相当する薬事規制、公的ガイドラインは現在のところない。PIC/S-GDPを考慮し、全体的な品質保証の観点で、自主的に指針を決めて運用する必要がある」との考えを示し、「欧州のGDPは公的規制。EU圏に製品を輸出する企業は対応が必要になる。(国内でも)近い将来のGDP対応は不可欠といっていい」と指摘した。
また、小山氏はGDPガイドラインを国内で展開する際に「品質システム」と「輸送」に関してギャップが大きいとの考えを紹介。「特にGDPを論じる中で議論が高まっているのが輸送の温度管理。医薬品業界だけでは対応できない課題が多々あり、流通関係業界の協力を得る必要がある」との見解を示した。