医療機器からのニッケルイオンによる炎症反応も問題に
東北大学は2月22日、ニッケルイオンにより誘発される炎症細胞の活性化が、生理的濃度の亜鉛イオンにより抑制されることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院薬学研究科の平澤典保教授、加齢医学研究所の小笠原康悦教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。
近年、金属イオン、特にニッケルに対するアレルギー反応をしめす金属アレルギーの患者が増加している。また、ステントなどのニッケルを含有する医療機器を体内に設置する機会が増加し、医療機器から溶出するニッケルイオンによる炎症反応、アレルギー反応の誘発も問題となっているが、その抑制方法は確立されていなかった。
細胞内ニッケル濃度の増加とともにIL-8の産生が増加
今回の研究では、ヒト単球系細胞株THP-1において、細胞内に取り込まれたニッケルイオン量を誘導結合プラズマ質量分析計により精密に測定し、インターロイキン-8(IL-8)の産生を指標として、炎症性細胞の活性化を評価。その結果、細胞内ニッケル濃度の増加とともに、IL-8の産生が増加することが確認されたという。
さらに、各種金属イオンの存在下でニッケルイオンを刺激したところ、低濃度の亜鉛イオンがニッケルイオンの取り込みとIL-8の産生をともに抑制することを見出したという。また、マウス背部皮下にニッケル金属を埋入することにより、溶出したニッケルによる炎症反応を評価したところ、コントロールマウスに比べて、低亜鉛状態のマウスにおいて強い反応が誘発されることが明らかとなった。
これらの結果は、生理的濃度の亜鉛イオンがニッケルイオンによる炎症反応に抑制的に作用していることを示している。研究グループは、この研究成果について、「近年、日本人に増大している低亜鉛血症患者の、ニッケルアレルギーが増悪化しやすいことを示唆し、注意を喚起するもの」と述べている。
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・東北大学 プレスリリース