■大学中心に地域連携も想定
検体測定室の普及に向けた教育研修活動を進めている「スマートヘルスケア協会」は、検体測定室の運営ノウハウに関して相談できる経験者のネットワークづくりに乗り出す。健康サポート薬局の取り組みが広がる中、健康支援ツールとして検体測定室のニーズは高まっているものの、自力で検体測定室を設置したり、健康フェアを実施できない薬局が多いのが現状。こうした状況を打開するため、全国の各都道府県で気軽に相談できる検体測定室の経験者をネットワーク化し、広く紹介する形で支援を進め、検体測定室導入の底上げを目指したい考え。
薬局で簡易血糖測定などを行う検体測定室の取り組みは増加を続け、運営件数は1月31日時点で1588件となった。薬局で検体測定室を運営するコストと時間の問題から、事業モデルを見出せず撤退する薬局や企業も見られる一方で、最近は検体測定室を臨時で開設し、地域のかかりつけ薬局をアピールするため、有効なツールとして健康フェアを開催するなど新たな動きが出てきている。
同協会は昨年、出張健康チェック事業で実績のあるケアプロと連携し、全国の薬局で気軽に検体測定事業を経験できる「出張検体測定室」の取り組みをスタートさせた。同社が委託を受けた薬局に期間限定で検体測定室を開設。届け出や試薬・機材の準備、医療ゴミの廃棄など全ての対応を手がける一方、同協会が開設のノウハウ、資料などの活用を通じて支援し、薬局の負担を軽減して検体測定室に取り組みやすくする布石となった。
さらに今年、検体測定室の底上げを図るため、運営ルールやノウハウに詳しい経験豊富な全国の薬剤師などを紹介し、ネットワーク化することで、各都道府県で検体測定室の開設を考えている薬剤師が気軽に相談できる体制づくりを進めたい考えだ。大学の附属薬局などにも協力を求め、地域で大学を中心に連携し、薬学教育に反映させると共に、検体測定室の運営ノウハウを共有、提供することで底上げにつなげる。
既に昨年からネットワーク化に向けて「検体測定室スタートアップセミナー」を開始し、これまで東京、仙台、札幌、岩手で開催。慶應義塾大学薬学部、岩手医科大学薬学部など大学の支援も取り付けた。また、神戸、旭川、広島では研修会や健康フェアの支援などを行ってきた。
岡崎光洋代表理事は、「検体測定室は、許可された背景やガイドラインの内容を理解し、生活者が安心して測定を受けられ、ケガや感染などが起こらないように実施するのが目的。地域で様々な相談に応じられる経験者のメンバーを増やし、一通り実際の測定まで行う流れを作ることで、全体の底上げにつなげたい」と意欲を示す。
大学との連携については、薬学教育モデル・コアカリキュラムに準拠したテキストで検体測定室が項目として取り上げられ、大学の授業で学生が学ぶことになっている。岡崎氏は「学生が検体測定室を理解し、関わるマインドを育てることが重要。そのためには大学の授業に取り入れる必要がある」と強調。その上で、「地域で人が集まるきっかけを作るのは大学をうまく活用することではないか。今年はもっと形を明確にできるようにしたい」と支援を強化する考えを示した。