これまで治療法のなかった腹部放射線治療後の重篤な合併症
千葉大学は2月19日、これまで治療法のなかった腹部放射線治療後の重篤な合併症である腸線維症において、好酸球が重要な役割を果たすことを発見し、発症のメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院粘膜免疫学/東京大学医科学研究所国際粘膜ワクチン開発研究センター自然免疫制御分野の植松智教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Science Translational Medicine」に掲載されている。
画像はリリースより
放射線誘発性腸線維症は、骨盤内腫瘍または腹膜転移のための腹部放射線療法後の重篤な合併症。特に小腸の粘膜下組織に顕著な線維化を引き起こす。
今回の研究では、腹部放射線照射後、腸管陰窩では慢性の細胞死が誘導された結果、細胞外にアデノシン三リン酸(ATP)の漏出を引き起こし、陰窩直下の筋線維芽細胞を活性化すること、この活性化筋線維芽細胞は、粘膜下に好酸球を浸潤させるとともに、活性化させることが判明。粘膜下の活性化した好酸球は、TGF-βの産生を介して、逆に筋線維芽細胞からのコラーゲン産生を促し、粘膜下に著明な線維化を誘導することが明らかになったという。
好酸球除去抗体の投与で腸管の好酸球浸潤は消失
今回、協和発酵キリン株式会社との共同研究において、新規にマウスInterleukin-5 receptor α(IL-5Rα)を標的とした好酸球除去抗体を開発。この抗体の投与によって、腸管の好酸球浸潤は消失し、放射線誘発性腸線維症は、顕著に改善したという。以上のことから、好酸球を標的とした抗体治療を行うことによって、放射線誘発性腸線維症の新しい治療戦略を示すことができたとしている。
放射線誘発性腸線維症は、これまで治療法がなかった。研究グループは、「好酸球除去抗体の投与は、腸管の線維化を抑制することができ、放射線治療後の患者の合併症を防いで、QOLの低下を回避できると考える」と述べている。
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