臨床研究では直接比較していない薬剤同士を比較
京都大学は2月22日、抗うつ剤同士で効き目と副作用を直接比較した522の臨床試験結果を統計的に処理することで、21種の薬剤の特徴を網羅的に比較・評価した結果を発表した。この研究は、同大医学研究科の古川壽亮教授、英オックス フォード大学のAndrea Cipriani准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、医学誌「The Lancet」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
うつ病の患者数は増え続けており、今後もこの傾向は続いていくと考えられる。抗うつ剤を用いて治療を始めることが多いが、どの薬が効果的なのか、副作用がどの程度起きやすいのか、数十種におよぶ薬剤を網羅的に比較した研究はなく、根拠に基づいた治療戦略を取れているとは必ずしも言えないのが現状だ。
一方で、数種の抗うつ剤と偽薬の効果や副作用の頻度を直接比較した臨床研究は世界中でいくつも行われている。今回の研究では、これら過去の研究データを統合し、臨床研究では直接比較していない薬剤同士の比較を試みたという。
21薬剤全てで偽薬よりも効果があることを確認も…
研究では、世界各地で行われてきた抗うつ剤のランダム化比較試験で二重盲検化されている研究結果を収集、統合。出版されていないものも含め、2016年1月8日までに報告された522件、延べ11万6,477人の試験結果が含まれている。大人を対象としており、第一、第二世代の抗うつ薬21種と偽薬の効果を直接比較した試験を選択。集めた試験結果の正確性や被験者の症状、人数の違いを吟味しつつ、抗うつ剤の効果と副作用で投薬を中止した割合を比較した。
解析の結果、今回対象とした21種の薬剤は全て偽薬よりも効果があることを確認。また、アミトリプチリンやエスシタロプラムなど8種の抗うつ剤は特に効果が強いこと、エスシタロプラムを含む6種の薬剤は比較的副作用が起こりづらいことが判明したという。しかし効果には幅があり、効果の現れやすさを表すオッズ比では、最も効果が期待できるアミトリプチリンが2.13なのに対し、レボキセチンでは1.38に留まったという。また、試験中に副作用で投薬を中止する割合も同様に薬剤同士で差が見られたとしている。
今回の成果について、研究グループは、「根拠に基づいた治療戦略を立てるうえで患者と精神科医双方にとって重要なものといえる。うつ病治療のガイドラインや医療政策を策定する際にも参照すべき」と述べている。
▼関連リンク
・京都大学 研究成果