一価不飽和脂肪酸、αリノレン酸などでリスク高く
愛媛大学は2月14日、妊娠中の一価不飽和脂肪酸、αリノレン酸、リノール酸摂取が、生まれた子の情緒問題のリスクを有意に高めることを示すとの研究成果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科疫学・予防医学講座の三宅吉博教授らの研究グループが、国立保健医療科学院、東京大学、琉球大学と共同で行ったもの。研究成果は「Nutrition」に掲載されている。
中枢神経には多くの脂肪酸が含まれており、脂肪酸摂取と神経精神疾患との関連が注目されている。妊娠中の脂肪酸摂取と生まれた子の行動的問題との関連に関する疫学研究は英国の「ALSPAC」という出生前コーホート研究のみだが、妊娠中のn-3系不飽和脂肪酸摂取は、生まれた子の発達やADHD(注意欠如多動性障害)とは関連がないとされてきた。
n-3系不飽和脂肪酸、DHA、EPAなどとは関連なし
研究グループは、妊娠中から母親と生まれた子を追跡調査した「九州・沖縄母子保健研究」のデータを活用。妊娠中に実施したベースライン調査に参加した1,757名の妊婦のうち、5歳時追跡調査まで全ての追跡調査し、解析に使用する変数に欠損のない1,199組の母子を解析対象者とした。ベースライン調査時の母親の年齢、妊娠週、居住地、子数、両親の教育歴、家計の年収、妊娠中の母親のうつ症状、妊娠中の母親のアルコール摂取、妊娠中の母親の喫煙、子の出生体重、性別、母乳摂取期間および生後1年間の受動喫煙を交絡要因として補正した。
画像はリリースより
解析の結果、情緒問題、行為問題、多動問題、および仲間関係問題は、それぞれ、子の12.9%、19.4%、13.1%、および8.6%に認められた。妊娠中の一価不飽和脂肪酸、αリノレン酸(n-3系不飽和脂肪酸の一種)、n-6系不飽和脂肪酸、リノール酸(n-6系不飽和脂肪酸の大部分)が多いほど、生まれた子の情緒問題のリスクが有意に高まったという。これらの脂肪酸摂取と行為問題、多動問題及び仲間関係問題とは関連がなかった。また、妊娠中の総脂肪酸、飽和脂肪酸、n-3系不飽和脂肪酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸およびコレステロール摂取は、いずれの行動問題とも関連がなかったとしている。
研究グループは、「妊娠中の一価不飽和脂肪酸、αリノレン酸、n-6系不飽和脂肪酸、リノール酸摂取は生まれた子の情緒問題のリスクを高めるのかもしれない」と述べ、今後、更なる研究データの蓄積が必要ではあるが、妊娠中の食習慣の変容により、子どもの行動的問題を予防できる可能性を示す非常に関心の高い研究成果であるとしている。
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・愛媛大学 プレスリリース