年間40万件以上の検査が実施されている冠動脈CT検査
国立循環器病研究センター(国循)は2月15日、冠動脈疾患が疑われる患者に対する冠動脈CT検査の意義に男女差があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同センター予防医学・疫学情報部の中尾葉子上級研究員、宮本恵宏部長、心臓血管内科の野口暉夫部長、安田聡副院長らからなる「なでしこ研究グループ」によるもの。研究成果は、英専門誌「Heart」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
突然死の主要な原因疾患となる虚血性心疾患、とくに急性心筋梗塞は、病院で適切な救命治療が行われたとしてもいまだ致死率が高く、慢性期には心不全の主要な原因になる。そのため、心筋梗塞およびその前段階である冠動脈の動脈硬化を早期に発見し、予防する必要がある。冠動脈疾患を発症した場合、女性は男性よりも重篤になるとされており、性差が心疾患の発症・進行・予後に与える影響を多角的・包括的に理解することが今後の医療の個別化、効率化のために重要だ。
冠動脈の狭窄や動脈硬化を調べるには、一般的に冠動脈CT検査が有用といわれており、年間40万件以上の検査が実施されている。しかし、冠動脈CT検査の有効性に性差があるかどうかの検討はこれまで不十分だった。
冠動脈石灰化スコアと冠動脈狭窄の関係に性差
研究グループは、冠動脈硬化と心血管イベントの関連に性差があるかを解明するため、冠動脈疾患が疑われる50~74歳の男女1,188人からなる全国規模の多施設前向きコホート研究を実施。今回の研究では、その中から冠動脈CT検査でわかる冠動脈石灰化スコアと冠動脈狭窄の関係に性差があるかを解析した。
その結果、冠動脈石灰化スコアで評価した動脈硬化の進展や冠動脈狭窄の発症割合は、男女で有意に異なることが判明。男性では血圧、コレステロール、喫煙歴など臨床項目に加えて冠動脈CT検査により冠動脈石灰化を評価することで冠動脈狭窄予測の精度は大きく向上するが、女性では一定の精度向上は見られるものの、男性ほど高精度では予測できないこともわかったという。これにより、臨床情報に冠動脈石灰化スコアを加えて冠動脈狭窄を予測することは有用だが、医療者は性差があることを意識して、診断方法や治療計画を検討する必要があることが示唆された。
女性の冠動脈狭窄をより正確に予測するためには、より精度の高くなる指標を加えて総合的に判断することが必要である。研究グループは、「すでに新たな項目を特定すべく研究を進めている」と述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース