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骨の無機成分と同組成の人工骨、歯科用インプラント治療で薬事承認-九大ら

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2018年02月19日 PM02:00

安全面、治療効果の面から自家骨移植が優先選択

九州大学は2月15日、骨の無機成分(低結晶性炭酸アパタイト)と同組成の人工骨「」を開発し、国内では初めて歯科用インプラントの周囲を含む領域でも使用可能な人工骨として薬事承認されたことを発表した。この開発は、同大大学院歯学研究院の石川邦夫教授の研究成果をもとに、科学技術振興機構、日本医療研究開発機構の医療分野研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラムとして、株式会社ジーシーが事業化開発を進めたもの。


画像はリリースより

失われた骨を回復させる骨再建術において、安全面、治療効果の面から患者本人の骨()の移植が優先選択されてきた。しかし自家骨移植は、患者は大きな負担を強いられること、採取できる自家骨の量にも限度があることなどの課題があり、近年ではこれに替わる機能性の高い人工骨の開発が望まれていた。

人工骨には、他家骨(国内未承認)、異種骨(動物由来の骨)、合成骨(化学合成された骨)の3種類がある。しかし、他家骨、異種骨は生物由来原料を用いているため安全性の確保が課題とされ、合成骨は安全性を確保しやすい反面、治療効果の面で課題があるとされていた。

確立されていなかった顆粒状の炭酸アパタイトの合成方法

石川教授らは骨の無機成分の成分分析を行い、骨の無機成分はハイドロキシアパタイトのリン酸基の一部が炭酸基に置換された炭酸アパタイトであることを確認。さらに、これまで確立されていなかった顆粒状の炭酸アパタイトの合成方法として、炭酸カルシウムを前駆体とし、リン酸塩水溶液中での溶解析出反応による組成変換を行うことで、炭酸アパタイト顆粒を完全人工合成する方法を世界で初めて見出したという。

粉末状の炭酸アパタイトは、各種製造法がこれまで明らかになっていたが、粉末状の場合、体内に移植した際に炎症を惹起するため、臨床応用できないという課題があった。同研究では、炭酸アパタイトが熱力学的に安定相であることに着目。ブロックや顆粒状の炭酸カルシウムを溶解析出反応によって組成変換することで、形状を保持したまま炭酸アパタイトに変換させることに成功したという。

同開発プログラムでは、ジーシーが前述の成果をもとに実用化を実施。(PMDA)の公的相談制度を用いて得た助言の下に実施した非臨床試験、および多施設共同臨床試験(治験)において、炭酸アパタイト顆粒の医療機器としての有効性および安全性が実証された。炭酸アパタイト顆粒は、生体内において骨に置換できることが示されたことにより、ジーシーは、歯科領域では国内初となる歯科用インプラントの周囲を含む領域で使用が可能な人工骨として、炭酸アパタイト顆粒製品の承認を得たとしている。

これまで歯科用インプラント治療において、日本国内で薬事承認された人工骨はなく、自家骨を用いざるを得ない状況だったが、今後は炭酸アパタイト顆粒を用いることが可能となった。これにより、自家骨採取が不要になることで患者への侵襲が減り、医療従事者側の負担軽減にもつながると期待される。研究グループは、「高齢者など自家骨採取が難しかった患者や、骨が不足しているために歯科用インプラント治療が受けられなかった患者にも適応が拡大され、今後、国民のQOL向上に寄与することが期待される」と述べている。

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