CPTPsに分類されるP2Y12受容体阻害剤
英アストラゼネカ社は2月7日、第3相PEGASUS-TIMI 54試験の新たなサブ解析結果として、心筋梗塞の既往歴があり2本以上の冠動脈狭窄(異常狭窄)がある患者において、「ブリリンタ(R)錠 60mg」 (一般名:チカグレロル)を使用した1年以上の長期治療により、主要心血管イベント(MACE)リスクが19%、冠動脈疾患死のリスクが36%低減することが明らかになったと発表した。このサブ解析結果は「Journal of the American College of Cardiology」に掲載されている。
ブリリンタは、シクロペンチルトリアゾロピリミジン群(CPTPs)に分類される、P2Y12受容体に直接作用するP2Y12受容体阻害剤。血小板活性を阻害することで効果を発揮し、急性冠症候群(ACS)患者において心筋梗塞あるいは心血管死を含むアテローム血栓性心血管イベントの発生率を減少させることが示されている。
PEGASUS-TIMI 54は、アストラゼネカ社の最大級のアウトカム試験のひとつ。ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカ、オーストラリア、アジア31か国、1,100超の施設からの2万1,000例を超える患者を対象としており、米国・マサチューセッツ州ボストンにあるブリガム・アンド・ウィメンズ病院のTIMI(心筋梗塞における血栓溶解)研究グループと共同で実施中だ。この試験は、ブリリンタが心筋梗塞の既往歴をもつ患者における心血管死、心筋梗塞および脳梗塞の長期発症抑制を適応として薬事承認を取得した際に基礎となった主要試験。
患者の過半数となる1万2,558例がMVDを呈す
同試験では、多枝病変(MVD)を初回の心筋梗塞発症時に2本以上の冠動脈に50%を超える異常狭窄が存在する病態と定義。同患者において、ブリリンタ錠60mgと低用量アスピリンの併用療法により、MACEのリスクが19%低減(ハザード比 0.81、95%信頼性区間 0.7–0.95)、および冠動脈疾患死のリスクが36%低減(ハザード比 0.64、95% 信頼性区間 0.45–0.89)した。
なお、同試験に参加した患者の過半数となる1万2,558例 (59.4%) がMVDを呈していたことから、この結果は心筋梗塞の既往歴がある患者における継続治療の意義を示唆し得るものだという。また、イベント発症から12か月後以降においても再発抑制を目的に抗血小板治療を続けることで、高リスク患者集団にベネフィットをもたらす可能性が、この結果によって示されたとしている。
ブリガム・アンド・ウィメンズ病院およびTIMI試験グループに所属し、同試験の治験医であるDr. Marc P. Bonaca MD, MPHは、「抗血小板薬治療が、高リスク患者の冠動脈イベントのリスク減少に効果があることは既に知られている。今回の新たな解析では、ブリリンタによる治療がMVDのあるリスクの高い患者集団において、絶対リスクをより減少させる可能性が示唆された」と述べている。
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・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース