副作用発現を引き起こすDPP8/9
岩手医科大学は2月9日、糖尿病薬であるDPP4阻害薬のオフターゲットであり、炎症性細胞死に関与するヒトDPP8・DPP9の類縁酵素の立体構造を高分解能で明らかにしたと発表した。この研究は、同大薬学部の阪本泰光准教授、昭和大学薬学部の田中信忠准教授、長岡技術科学大学の小笠原渉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
画像はリリースより
経口糖尿病薬として、ヒトDPP4を分子標的とするグリプチン類の処方機会が急増している。DPP4の類縁酵素のヒトDPP8/9は、オフターゲットへの影響によりグリプチン類などの阻害薬で阻害され、副作用発現を引き起こすことから、DPP8/9の立体構造解明が待たれている。
また、DPP8/9の阻害が炎症性カスパーゼ1の活性化を引き起こし、炎症性細胞死の一種であるパイロトーシスを引き起こすメカニズムも近年明らかになってきた。しかし、ヒトDPP8/9が、どのようにカスパーゼ1の不活性型前駆体であるプロカスパーゼを活性化するのか明らかになっていない。
微生物DPP4はヒトDPP8/9に類似
ジペプチジルアミノペプチダーゼ(Dipeptidyl aminopeptidase; DPPもしくはDAP;EC3.4.14)は、主に基質であるオリゴペプチドのN末端から2番目のアミノ酸残基を認識し、ジペプチドを産生する酵素。これまでに、Pseudoxanthomonas mexicana由来DAP IVとその近縁のStenotrophomonas maltophilia由来DPP4の化合物の結合していない構造が2008年に決定されていたものの、化合物の結合している構造は解かれていなかった。
今回、化合物の結合した構造では、化合物の結合していない構造では見えていなかった20アミノ酸残基ほどの領域が、αヘリックスという二次構造をとり、基質の認識に重要な役目をしていることが判明。また、微生物DPP4は、ヒトDPP4に類縁の酵素と考えられていたが、今回明らかにした二次構造を指標にして、他のヒトDPPや微生物DPPなどと比較したところ、どちらかというとヒトDPP8/9に類似していることもわかったという。
この成果について研究グループは、「DPP8/9を阻害せずDPP4を選択的に阻害する副作用の少ない糖尿病薬、DPP8/9を選択的に阻害することで抗腫瘍効果を有する薬剤および微生物DPP4を選択的に阻害するような抗菌薬の開発への貢献が期待される」と述べている。
▼関連リンク
・岩手医科大学 プレスリリース