遠隔診療をめぐっては、政府が昨年12月に決定した新しい経済政策パッケージで、必要なルールを包含するガイドラインを整備し、今年度内に取りまとめて公表することとされていた。これを受け、厚労省は検討会を立ち上げ、ガイドラインの策定に向け議論を開始した。この日の初会合では、厚労省が遠隔診療の定義と名称、基本理念と倫理指針、ガイドラインの項目の三つの論点を提示。遠隔診療について、医師対患者で行われる外来・在宅診療とし、名称を「オンライン診療」とすることで合意した。酒巻哲夫委員(日本遠隔医療学会名誉理事)は「遠隔診療の定義は広い。オンライン診療とは何かという定義を改めて明確化する必要がある」と指摘した。
ガイドラインの項目については、適用の基準、提供体制、その他に分類し、患者との関係性、適用対象、診療計画、本人確認、薬剤処方・管理、診察方法などと共に、提供場所や患者の受診場所、通信環境や質評価、エビデンスの蓄積などが案として示された。
その中で、オンライン診療における薬剤処方・管理については、厚労研究班の報告書で「飲み合わせや過量処方の防止などリスク管理の観点から、かかりつけ薬剤師・薬局の関与や薬剤の一元管理などの要件を考慮すべき」「薬剤管理は、原則かかりつけ薬剤師・薬局からのみの処方とすることが望ましい」とかかりつけ薬剤師・薬局に役割を求める意見が出た。一方で、「現実的にかかりつけ薬剤師・薬局が整備されていないことから実現が難しい」との指摘もあった。
こうした意見を踏まえ、山口育子委員(認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)も「オンライン診療での薬剤処方については、何らかの監査をしないといけない。薬剤師の関与があることで監査できる」と主張。薬剤処方・管理について、かかりつけ薬剤師・薬局の関与をガイドラインに盛り込むよう求めた。
島田潔委員(板橋区役所前診療所長)は「薬に関しては、薬局に管理してもらうのが良い」と賛同しつつ、「漢方医が処方した生薬などについてはどうするか」などと課題を挙げた。
また、初会合では初診からオンライン診療を認めるかどうかが議論になった。委員からは、「初診は原則対面診療とすべき」との意見が大勢を占めたが、金丸恭文委員(フューチャー会長兼社長グループCEO)は「対面診療の状況が整わない場合、初診からオンライン診療もあり得るのではないか。原則、初診は対面診療で良いと思うが、その後の発展性に柔軟な道を残してもらい、技術進歩に応じてアップデートしてほしい」と要請。
今村聡委員(日本医師会副会長)も「あくまでガイドラインはオンライン診療が進展して、エビデンスが蓄積される中で書き換えていくことが重要」との見解を述べた。