心電図検査でも診断されていない“隠れ心房細動”
東京医科歯科大学は2月6日、心房細動に関連して血中で増加する4種類のマイクロRNAを同定し、これらをバイオマーカーとして用いた診断パネルは、心房細動の発症予測に有用な可能性を示したと発表した。この研究は、同大大学院保健衛生学研究科生命機能情報解析学分野の笹野哲郎准教授、棗祐有大学院生と、同医歯学総合研究科循環制御内科学の平尾見三教授、同難治疾患研究所生体情報薬理学の古川哲史教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Circulation Journal」オンライン版で発表されている。
心房細動は発作性として始まり、徐々に慢性化する。動悸などの自覚症状があったとしても、動悸発作時の心電図がなければ心房細動とは診断できない。また、心房細動の約3分の1は自覚症状がないと報告もあり、この場合は、健康診断などの心電図検査で偶然発見される以外には診断されることはない。つまり、本当は心房細動を発症しているのに診断されてない人は相当数いると考えられる。
心房細動の重大な合併症として、心臓でできた血栓が脳に飛び、血管を閉塞する心原性脳梗塞がある。心原性脳梗塞は重症例が多く、死亡あるいは重度の後遺症を残すことが多いと報告されている。心房細動と診断されると、脳梗塞のリスクを考えて脳梗塞の予防治療を行うが、診断されていない人には当然ながら治療は行われず、脳梗塞を発症したのちに心房細動だったと判明することも珍しくない。このため、心房細動の有無を予測できるような簡便な検査が求められている。
感度76%、特異度80%の精度で心房細動の発症を予測
研究グループは、血液中のマイクロRNAに着目。今回は、心房細動患者および健常15名から採血を行い、733種類のマイクロRNAを網羅的に解析した。また、心房細動の動物モデルとしてマウスを用いた心房頻拍誘発モデルを作成し、心房組織の中の672種類のマイクロRNAを網羅的に解析した。これらの結果を統合して心房細動に関連するマイクロRNAの候補を選び、さらに心房細動患者および健常者計100名より採血を行って血中マイクロRNAを定量。最終的に心房細動に関連して増加する4種類のマイクロRNA(miR-99a-5p、miR-192-5p、miR-214-3p、miR-342-5p)が同定され、これらを組み合わせたマイクロRNA診断パネルは、感度76%、特異度80%の精度で心房細動の発症を予測することが明らかになったという。
画像はリリースより
研究グループでは、東京医科歯科大学医学部附属病院に通院する患者を中心に被験者を募り、遺伝子多型解析・マイクロRNA解析・特殊心電図解析・血液凝固能解析などを組み合わせた、より精度の高い心房細動と心原性脳梗塞の発症予測研究を2018年度より行う予定としている。
▼関連リンク
・東京医科歯科大学 プレス通知資料