アレルギーマーチに発展する喘息・鼻炎や食物アレルギー
順天堂大学は2月7日、アレルギーを引き起こすダニや花粉の抗原に含有されるプロテアーゼ活性が抗原感作成立後の気道炎症の発症に重要な役割を果たすことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科・アトピー疾患研究センターの高井敏朗准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載されている。
画像はリリースより
皮膚を介した抗原感作が起点となる喘息・鼻炎や食物アレルギーなどは、アレルギーマーチに発展することがわかってきている。経皮抗原感作が成立した後の呼吸器や消化管などでのアレルギー性炎症の発症には、T細胞やIgE抗体などの獲得免疫系が関与すると考えられているが、なぜごくわずかな量の抗原にT細胞が過敏に反応するのかは、よくわかっていなかった。
T細胞受容体とIL-33受容体の同時刺激が相乗的にT細胞応答を増強
研究グループは、ダニ主要アレルゲンと構造が類似したパパイヤ由来のプロテアーゼ「パパイン」をモデル抗原として選択。これを重要な抗原感作ルートと考えられる皮膚に塗布して感作を成立させたマウスは、少量の抗原の吸入によって気道炎症を発症したという。
この反応は吸入時の抗原のプロテアーゼ活性を失活させると起こらなかったことから、発症には抗原のプロテアーゼ活性を必要とすることが明らかになった。さらに、プロテアーゼによって損傷を受けた気道上皮からサイトカインであるインターロイキン33(IL-33)が放出され、その受容体を発現する2型ヘルパーT細胞(Th2)が気道に数多く浸潤し、T細胞受容体とIL-33受容体の同時刺激が相乗的にT細胞応答を増強していることがわかったという。
抗原感作が成立した後のアレルギー性炎症の発症には、T細胞やIgE受容体などの抗原の構造を認識する獲得免疫系が中心的に関与すると考えられてきたが、感作成立後の発症は単に抗原構造の認識だけでなく、プロテアーゼ活性の刺激が共在することによって開始し、最小量の抗原吸入に対して過敏に炎症反応が誘発されることが、今回の研究で明らかになった。研究グループは、「今後は、プロテアーゼ活性による上皮損傷やその下流の経路などを標的とし、経皮感作を起点としたアレルギーマーチ等に対する新しい予防・先制介入・治療戦略の策定に向けて研究を進める」と述べている。
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・順天堂大学 プレスリリース