■薬局と長所生かした連携を
第10回九州山口薬学会ファーマシューティカルケアシンポジウムが3~4の両日、下関市内で開かれ、退院後に服薬管理が難しい患者に病院薬剤師が訪問薬剤管理指導を実施した結果、服薬アドヒアランスが向上して減薬につながったことが、畑本慶太氏(武蔵ヶ丘病院薬剤部)から報告された。現在は薬剤師数の確保や病棟薬剤業務と兼務が難しいマンパワーの問題から、薬局薬剤師と連携した訪問体制を構築。病状の安定しない患者は病院薬剤師、安定した患者は薬局薬剤師と、長所を生かした連携の重要性が強調された。
同院は、高齢化の進む熊本県北区にある地域密着型ケアミックス型病院。入院患者の8割近くが60歳以上で、退院後に服薬アドヒアランス不良で再度入院となる患者も多く、再入院率は平均27%と高い。こうした中、訪問リハビリスタッフや訪問看護師から「部屋に薬が落ちていて、判断ができず困る」「把握が困難。重複していないか不安」など院内の薬剤師に関与を求める声が出た。
そこで畑本氏は、退院後に服薬管理が難しい患者に訪問薬剤指導を開始した。まだ病院薬剤師が在宅訪問している施設は少ないが、医師の訪問指示を受け、ケアプランをもとに患者宅を訪問。服薬状況やバイタルサインなどを確認。さらに外来受診時には診察に同席し、在宅での状況報告など医師と情報を共有、処方提案につなげている。
実際、認知症患者など、訪問指導を行った6人の患者に対し、服用しているか分かりにくい薬袋管理から、日めくりカレンダーやウィークリーカレンダーによる管理方法に変更した結果、ほとんどの患者で服薬アドヒアランスが向上した。さらに、薬剤師の介入により薬剤中止や減薬に至ったケースが約半数に上り、畑本氏は「病院薬剤師が在宅に行くことでポリファーマシー対策になっているのではないか」と手応えを語った。
ただ、訪問に当たっては薬剤師の確保や病棟業務と兼務が難しく、月2回の訪問しかできない制度上の問題があることから、同院を起点に月4回訪問できる薬局薬剤師と連携を開始。病状が安定しない患者は病院薬剤師、病状が安定している患者は薬局薬剤師が訪問薬剤管理指導を行う体制を作った。
畑本氏は「お互いの長所を生かして連携することが重要」と述べ、今後は薬剤師による訪問薬剤管理指導の認知度向上などを課題に挙げた。
■薬局が癌診療のハブに
一方、キムラ薬局本店(別府市)の中島美紀氏は、地域の保険薬局として癌の薬薬連携に取り組んでいる事例を紹介した。同薬局は、地域のがん診療連携協力病院の門前薬局。2年前から病院主催の薬薬連携会議が始まったり、医療連携ネットワークも稼働しているものの、「連携の器はできているが、なかなか使いこなせない」(中島氏)現状があった。
こうした中、新たに在宅の連携を通じて日本癌治療学会の「認定がん医療ネットワークナビゲーター」の資格を取得し、拠点病院の地域連携室で顔の見える関係ができ、院内の化学療法委員会、緩和ケア委員会などに参加して連携を深めてきた経緯を報告した。
中島氏は、かかりつけ薬剤師、健康サポート薬局の制度がスタートした中、ナビゲーターの活動地域が重なるとし、薬局薬剤師が様々な職種につないで地域に貢献できると訴えた。