がん細胞を監視、攻撃することで増殖を抑制するNK細胞
富山大学は1月29日、がん免疫応答におけるナチュラルキラー細胞の新たな機能を解明したと発表した。この研究は、同大和漢医薬学研究所の早川芳弘教授の研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「Cancer Immunology Research」に掲載された。
画像はリリースより
ナチュラルキラー(NK)細胞は、事前の感作なしにがん細胞を殺すことができる細胞として発見された自然リンパ球の一種。がん細胞やウイルス感染細胞などの排除において重要な役割を担っている。
通常、NK細胞はがん細胞を監視し、攻撃することでその増殖を抑制。NK細胞の機能低下や不全はがん細胞にとって有利に働き、増殖を促進する。一方、がんを取り巻く微小環境での炎症は、がん細胞の増殖や転移といった悪性化に寄与することが近年注目されている。がん悪性化に関わる炎症は、がん細胞に直接影響するだけでなく、周辺細胞にも大きな影響を与える。このような炎症は、がん細胞における血管新生を促進する要因のひとつとして考えられている。
悪性化した好中球を抗がん剤で制御することで抑制可能
今回、研究グループは、これまでに知られていた直接的ながん細胞の攻撃だけでなく、NK細胞が炎症性細胞である好中球の悪性化を阻害することで、がん悪性化を抑制していることを発見。NK細胞の機能低下・不全に伴い、好中球が血管内皮細胞増殖因子VEGF-Aの産生にみられる悪性化形質を獲得し、血管新生とがん細胞増殖を促進することがわかったという。また、NK細胞の機能低下・不全に伴い見られるがん細胞増殖は、悪性化した好中球を抗がん剤で制御することによって抑制可能であることも明らかになったとしている。
多くのがん患者でNK細胞の機能低下や不全が見られることから、今回の成果を応用した新しいがん治療へとつながる可能性がある、と研究グループは述べている。
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