多くのがんで頻繁に発現・増加するタンパク質c-Myc
東北大学は1月29日、がん遺伝子「c-Myc」を指標に、c-Myc高発現型卵巣がんと合成致死を示す治療標的分子として、タンパク質「Furin」を世界で初めて同定したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科婦人科学分野の豊島将文講師、八重樫伸生教授、同大東北メディカル・メガバンク機構地域医療支援部門の北谷和之講師らの研究グループによるもの。研究成果は「Oncotarget」誌に掲載された。
画像はリリースより
病状が進行してから発見されることが多い卵巣がんは、悪性腫瘍の中でも予後が悪いがんのひとつ。その理由として、異なる性質の卵巣がんに対して同じ治療が行われることが一因と考えられ、予後の改善には腫瘍の性質にあった個別化医療を実現する必要がある。
c-Mycは多くのがんで頻繁に発現が増加しており、卵巣がんでは31.5%の割合でc-Mycの遺伝子増幅が観察されるという。c-Mycは卵巣がんの治療法を選択するためのバイオマーカーになり得るが、正常な細胞にも必要なタンパク質であることから、その機能を抑えると正常細胞も傷害することになり、c-Mycを直接の治療標的とすることは困難だ。
Furinの機能阻害で細胞増殖抑制
研究グループは、複数因子の異常が同時に生じることにより細胞死が生じる「合成致死」という概念に注目。c-Myc高発現型と低発現型の卵巣がん細胞株を用いて、c-Mycの発現が高い型の卵巣がんに効果が高い治療標的を探索したところ、c-Myc高発現型卵巣がんと合成致死を示す標的分子としてタンパク質「Furin」を同定したという。
プロタンパク転換酵素であるFurinは、プロタンパク質を不活性型から活性型へ変化させる。今回の研究では、c-Myc高発現型卵巣がんでFurinの機能を阻害すると細胞増殖が抑制されること、c-MycとFurinの発現量がどちらも高いと卵巣がんの細胞増殖がより促進されることも明らかにしたという。また、Furinの切断標的であるタンパク質「Notch1」が、細胞増殖におけるc-MycとFurinの協調的な働きに関係することが示されたとしている。
研究グループは「Furinは、c-Myc高発現型卵巣がんに対して有望な治療標的となり、卵巣がんの個別化医療への実現につながると考えられる」と述べている。
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