米国研究製薬工業協会(PhRMA)のパトリック・ジョンソン在日執行委員会委員長(日本イーライリリー社長)は、29日に都内で記者会見し、来年度から運用される薬価制度の抜本改革を受け、今後日本政府に対して、▽新薬創出等加算の再検討▽他国の経験を踏まえた費用対効果評価(HTA)の検討▽2年に1回の薬価改定を維持――の3点を求めていく考えを示した。パトリック氏は、「日本市場は中長期的に先進国で唯一のマイナス成長となる可能性がある」と懸念を示した上で、「薬価制度改革によって、日本に対して投資する動きはなくなっていく」と述べ、研究開発投資を呼び込む市場として国際競争力を維持するためには、制度の見直しが必要と訴えた。
パトリック氏は、薬価制度の抜本改革について、「国民皆保険制度の持続とイノベーション推進のバランスが取れていない」と指摘。新薬創出等加算については、新たに企業・品目要件が設けられ、加算対象品目が約920品目から約540品目へと約4割減に絞り込まれる見通しだが、「正しい新薬創出等加算制度を設定してほしい」と述べ、新薬の特許期間内に関しては薬価を維持するよう求めた。
導入に向けて議論が進められているHTAについては、「世界各国で導入されているが、全て失敗している。患者からもHTAが新薬アクセスの阻害要因になっているとの声が出ている」と牽制し、海外での経験を踏まえて検討すべきと要望した。さらに毎年薬価改定に関しても、「あってはならない」とし、2年に1回の改定を維持していく必要性を強調した。
また、今回の薬価制度が日本の製薬業界に与える影響は、「すぐに出てこないが10年くらいかけて出てくると思われる」との見方を示した上で、欧州や米国、中国といった地域との比較において、「国際共同治験に参加し、早期開発を行う市場からは脱落するだろう」と予測。今後、イノベーションの推進と国民皆保険の維持を両立した制度設計が求められるが、「製薬企業にとって、大切な長期収載品の薬価引き下げを提案してきたが、革新的な薬剤の薬価は保護しなければならない」と譲歩しないスタンスで、日本政府との議論に参画していく方向だ。