■「研究型高度薬剤師」養成へ
大阪大学薬学部は、4年制の「薬科学科」と6年制の「薬学科」を統合し、一本化する。二つの学科を発展的に融合させ、薬学基礎研究力と創薬基盤技術力、臨床力を備えた「研究型高度薬剤師」を養成することが目的で、「研究ができる薬剤師」の輩出を見込む。6年制への一本化は2019年度の入試から適用し、募集人数は80人で変更しない。これに伴い、4年制の薬科学科は年次進行で廃止する。薬学教育に4年制と6年制課程が併設されて以降、研究・分析能力を備えた研究型薬剤師の枯渇が叫ばれており、「喫緊の課題」と捉える文部科学省の理解も得ているという。
同大学薬学部では、「新6年制」の移行に伴い、「Pharm.D」(定員20人)、「薬学研究」(55人)、「先進研究」(0~5人)の三つのコースを設定する。
いずれも、全員が薬剤師国家試験に合格することを前提としており、Pharm.Dコースでは、医療や臨床を中心とした研究・教育を進める。
薬学研究コースは、より基礎や創薬研究を目指す学生の教育に注力する。カリキュラムを工夫し、薬学基礎研究、創薬研究にできるだけ長く、連続した時間を割けるようにする。
先進研究コースでは、豊かな臨床力に加え、先進的・総合的な視野を持ち、グローバルに活躍できる研究能力を持った薬剤師の養成を目指す。「確実に人材を確保し、養成していきたい」との思いから、10年一貫教育とし、AO/推薦入試で定員は5人までとする。
同大の堤康央薬学部長は、新たな教育システムの導入について、「単に従来の4年制と6年制を一本化したのではなく、研究型薬剤師を養成することにフォーカスした新たな制度を創設すると理解している」と話す。
その上で、「Pharm.Dコースは、クリニカルクエスチョンを見つけてきて、研究に持っていくイメージで、薬学研究コースは、基礎から研究を積み上げていき、医療現場のニーズを知った創薬研究ができる」と説明した。
同大学大学院薬学研究科の辻川和丈教授は、「他大学の創薬研究を指向した薬学部との大きな違いは、臨床経験を通じて患者と接し、病気が分かっているところにある」と強調する。
6年制一本化の背景には、「ファーマシスト・サイエンティスト(研究能力を持つ薬剤師)」の減少がある。薬学教育が4年制一本だった頃は、国公立で400人程度の博士・薬剤師が輩出されていたが、6年制併設後には、約1割程度にまで落ち込み、「圧倒的に減少してしまった」(辻川氏)という。
4年制課程の学生に、薬剤師国家試験の受験資格を特例で認める経過措置が17年度で終了することに伴い、教育研究者、リーダー薬剤師、薬事行政に携わる人材の不足が深刻化する「2025年問題」への対応が焦点となっている。
堤氏は、「こうした人材をいち早く確保していかなければならず、新全6年制の導入を進めていこうと考えた」と語った。