薬機法に基づく医師主導治験の実施へ
岡山大学は1月26日、「岡山大学方式の人工網膜OUReP(TM)」が、黄斑変性を有するサルの視覚誘発電位を回復することを証明したと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科(医)眼科学分野の松尾俊彦准教授ら研究グループによるもの。研究成果は、近日中に米人工臓器学会の機関誌「Artificial Organs」に掲載される予定。
岡山大学方式の人工網膜OURePは、色素結合薄膜型の人工網膜。2013年にアメリカで販売開始されたカメラ撮像・電極アレイ方式とはまったく異なる技術の人工網膜であり、医薬品医療機器総合機構(PMDA)と薬事戦略相談を積み重ね、「医薬品医療機器法(旧薬事法)」に基づく医師主導治験を同大学病院で実施する準備を進められているという。
低下した電位の振幅が回復、6か月後も維持
研究グループは、まず黄斑変性を有するサルを作成。サルの眼球の後方から塩化コバルト液を網膜の裏に注入して、右眼にのみ黄斑変性を作った。次に、ヒトと同じ硝子体手術の方法を用いて、黄斑変性の右眼の網膜の裏側に液を注入し、網膜剥離を作った。
人工的網膜剥離の作成が完成した後、人工網膜OURePの手術を実施。網膜剥離を起こした網膜に穴をあけ、人工網膜を網膜の裏側に挿入した。その後、網膜剥離の裏の液を吸って網膜を元に戻し、レーザーで網膜の穴の周囲を凝固して、硝子体中の液体を特殊な空気(ガス)に変えて手術を終えたという。
画像はリリースより
術後6か月にわたって、眼科検査を行って経過を見たところ、網膜剥離や出血などの合併症は一切認められなかったという。さらに、光刺激によって脳の後頭葉で誘発される脳波を加算して記録する視覚誘発電位を調べると、黄斑変性で低下した電位の振幅が人工網膜を挿入した1か月後には回復し、さらに6か月後にも維持されていたとしている。
岡山大学方式の人工網膜OURePは、これまでに毒性がないことを生物学的安全性評価に基づいて証明しており、製造管理と品質管理は、同大大学院自然科学研究科(工)の内田准教授が確立している。今回の研究成果について、研究グループは、「人工網膜の有効性をさらに補強し、網膜色素変性の患者が参加する医師主導治験に向けた根拠になる」と述べている。
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・岡山大学 プレスリリース