生体外で複数の臓器モデルを組み合わせて生体内の臓器機能を再現し、新薬候補物質の有効性と安全性を動物実験や臨床試験を行う前に、精度良く予測する評価法「ボディ・オン・チップ」に注目が集まっている。これまではヒトの培養細胞で臓器を作製しても、単一の臓器での評価にとどまっていたが、生体に似た環境下で全身毒性を評価でき、動物実験を代替できる試験として期待されている。ボディ・オン・チップを実用化できれば、新薬開発の成功確率向上や開発コストの削減、開発期間の短縮などを実現でき、創薬プロセスを変革するブレイクスルー技術になる可能性がある。ただ、解決すべき技術的なハードルも多く存在しており、産官学連携による開発が必要不可欠だ。
■創薬の「障壁突破」可能性も
新薬の研究開発をめぐっては、一つの薬剤を開発するのに1000億円以上のコストがかかり、開発期間の長期化や動物実験で確認した有効性・安全性が患者で再現できずに開発失敗に終わる開発成功率の低さが課題だった。さらに治験に関しても、症例数が少ないことや投与方法が単純で投薬期間が短く、対象者の年齢制限や特殊な患者を除外しなければならない理由から、承認取得前の安全性評価に限界が生じている。