多目的コホート研究「JPHC Study」に基づく調査結果
国立がん研究センター 予防研究グループは1月24日、多目的コホート研究「JPHC Study」の成果として、40~69歳の男女約9万6,000人を対象とした、喫煙・飲酒と口腔・咽頭がん発生リスクに関する調査結果を発表した。
国際がん研究機関(IARC)では、喫煙や飲酒は口腔・咽頭がんの確実なリスクであると報告しているが、日本人を対象とする喫煙、飲酒と口腔・咽頭がん罹患リスクとの関係を検証した大規模な研究はほとんど行われていない。
今回、研究グループは、1990年と1993年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田(呼称は2018年現在)の11保健所管内に在住だった人のうち、がんの既往がなく、アンケート調査に回答した40~69歳の男女約9万5,525人を、2010年まで追跡した調査結果に基づいて、喫煙・飲酒と口腔・咽頭がん発生リスクとの関連を調べたという。
口腔・咽頭がんの罹患リスク、男性は喫煙で2.4倍増加
研究対象に該当した人のうち、2010年までの追跡期間中に222人が口腔・咽頭がんに罹患。そのうち女性は62人(27.9%)だった。
画像はリリースより
男性においては、現在喫煙者の口腔・咽頭がんの罹患リスクは、非喫煙者と比べて2.4倍増加。また、累積喫煙指数(1日喫煙箱数×喫煙年数)が60以上のグループでは、吸わないグループと比べて、罹患リスクが4.3倍増加したという。部位別では、下咽頭がんへの影響がとくに大きく、たばこを吸うグループで約13倍、累積喫煙指数60以上のグループで約21倍、罹患リスクが増加した。また、週に1回以上飲酒するグループは、非飲酒者に比べ、口腔咽頭がんの罹患リスクが1.8倍増加。エタノール摂取量に換算して、週に300g以上(1日平均4合以上)酒を飲むグループでは、罹患リスクは3.2倍増加した。下咽頭がんへの影響が大きく、週に1回以上の飲酒するグループで3.3倍、週に300g以上酒を飲むグループでは、10.1倍増加したという。
女性では、たばこを吸わないグループと比べて、たばこを吸うグループで口腔咽頭がん罹患リスクは2.5倍増加する傾向がみられた。また、酒を飲まないグループとくらべて、週にエタノール150g以上を飲酒する女性グループでは、口腔・咽頭がん罹患リスクは5.9倍と、統計学的に有意な増加がみられたとしている。
今回の結果について研究グループは、「ここれまでの国際的評価を支持する結果であり、日本人における口腔・咽頭がんの予防のためには、喫煙せず、飲酒量を控えることが重要であることが再確認された」と述べている。
▼関連リンク
・国立がん研究センター 現在までの成果