がん形成に影響を及ぼす遺伝子の発現量やメチル化修飾異常
大阪大学は1月19日、遺伝子の発現量とDNAのメチル化データの統合解析を可能にする新しい数理解析法を開発し、食道がん細胞の抗がん剤への効きやすさを左右する新規遺伝子TRAF4を同定したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の今野雅允寄附講座講師(先進癌薬物療法開発学寄附講座)、石井秀始特任教授(疾患データサイエンス学共同研究講座)、森正樹教授(消化器外科)、滋賀大学データサイエンス学部の松井秀俊准教授らのグループによるもの。研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」にて公開された。
近年、遺伝子の発現量やメチル化修飾の異常が、がんの形成や進行に影響を及ぼすことが明らかになってきた。しかし、約2万2,000の全遺伝子の発現量、メチル化修飾量を統合して網羅的に解析する手法はなかった。
ヒト食道がん細胞データを用いて数理解析法で調査
今回、研究グループは、遺伝子の発現量とDNAのメチル化データの統合解析を可能にする数理解析法を新規に開発。食道がんに注目し、遺伝子の発現量やメチル化修飾の異常を、ヒト食道がん細胞データを用いて数理解析法で調べた。
画像はリリースより
その結果、食道がんで特異的に遺伝子の発現量が上昇し、メチル化修飾量が減少している新規遺伝子TRAF4を同定したという。また、マウスを用いた実験から、TRAF4の量を変化させることで食道がんの抗がん剤への効きやすさが変化することもわかったとしている。
がんでは遺伝子変異が高頻度に発生するため、DNAの塩基配列を読み取って遺伝子変異を診断することも重要だが、遺伝子の発現量とメチル化の統合解析からアプローチすることも重要であることが今回の研究成果によって示唆された。また、食道がんの抗がん剤への効きやすさを左右する遺伝子TRAF4が明らかになったことにより、既存薬として開発されているものの中から食道がんの治療に応用できる可能性が示唆された、と研究グループは述べている。
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