非発作時にはアセチルコリン負荷誘発試験が必要
東北大学は1月23日、冠攣縮性狭心症患者において、攣縮を生じている冠動脈の病変部位の炎症性変化の画像化に、世界で初めて成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明教授、松本泰治院内講師、大山宗馬医師(大学院生)らと、同放射線診断学分野の高瀬圭教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国心臓病学会(ACC)の学会誌「Journal of the American College of Cardiology」電子版に掲載された。
画像はリリースより
狭心症は、器質性狭心症と冠攣縮性狭心症に分類される。器質性狭心症に対する治療としては、冠動脈内ステント治療が進歩を遂げている一方で、冠攣縮性狭心症には未解明の課題が多く残されている。また、冠攣縮は、非発作時には冠動脈血管造影では検出できないため、アセチルコリン負荷誘発試験が必要だ。
研究グループは、冠攣縮の発症機序として、冠動脈外膜が炎症性変化を起こし、血管平滑筋収縮の分子スイッチの役割を果たしているRhoキナーゼが関与するシグナル伝達系が亢進することで、血管平滑筋の過剰な収縮(攣縮)が引き起こされることを世界に先駆けて解明。さらに、ブタを用いた前臨床研究で、冠攣縮部位の炎症性病変の検出における18F-FDG PET/CTの有効性を明らかにしていた。
冠動脈外膜とPVATの炎症性変化を可視化
今回の研究では、冠動脈外膜に加え、冠動脈周囲脂肪組織(PVAT)に注目。冠動脈外膜とPVATの炎症性変化が冠攣縮性狭心症の成因に関与しているかどうか、その炎症性変化が18F-FDG PET/CTなどを用いて画像化できるか否かを検討したという。
研究グループは、東北大学病院循環器内科に冠攣性狭心症が疑われてカテーテル検査入院となった40名の患者を、アセチルコリン負荷誘発試験の結果に基づき、27名の冠攣縮性狭心症患者と13名の対照患者とに分けて、冠動脈外膜とPVATの炎症性変化を比較。その結果、冠攣縮部位で冠動脈外膜とPVATの炎症性変化が亢進していることを、18F-FDG PET/CTイメージングを用いて画像化することに世界で初めて成功したという。さらに、カルシウム受容体拮抗薬を中心とする内服治療後に、狭心症状の改善とともに冠動脈外膜とPVATの炎症性変化が改善することを、同イメージングの画像化によって世界で初めて示したとしている。
この研究の成果から、18F-FDG PET/CTによるイメージングを用いて冠動脈外膜とPVATの炎症性変化の可視化が可能であることが実証された。研究グループは、「アセチルコリン負荷誘発試験をしなくても冠攣縮性狭心症の診断ができる可能性を示唆しており、冠攣縮に関する新たな病態解明や非侵襲的な画像診断への応用につながることが期待される」と述べている。
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・東北大学 プレスリリース