CMV抗体陽性の造血幹細胞移植患者対象P3試験で
アステラス製薬株式会社は1月22日、米Vical Incorporated社と共同で開発しているサイトメガロウイルス(CMV)DNAワクチン(開発コード:ASP0113)について、CMV抗体陽性の造血幹細胞移植患者を対象に進めていた国際共同第3相HELIOS試験で主要評価項目と副次評価項目を達成しなかったことを発表した。
ASP0113は、造血細胞移植患者において、サイトメガロウイルス感染症およびそれに伴う合併症を抑制するためにデザインされた開発中の二価DNAワクチン。細胞性および体液性免疫応答を誘導するために、サイトメガロウイルスのリンタンパク質65および糖タンパク質B抗原をコードするもので、ポロキサマーをベースとした独自の送達システムとともに製剤化される。
同剤はVical社により開発され、米国と欧州で、臓器移植患者および造血細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス感染抑制の治療薬として、オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を受けている。アステラスは2011年7月に、同ワクチンの全世界における開発・商業化に関する独占的ライセンス契約をVical社と締結。アステラスが主導して開発を進めている。
ヘルペスウイルス科に属するウイルスであるサイトメガロウイルスは、米国において半数以上の成人が50歳までに感染すると言われており、発展途上国では米国以上に多くの割合の人が感染していると言われている。免疫が正常に働いている健康な人では大きな問題にならないが、免疫が十分に機能していない人では、サイトメガロウイルスの再活性化のリスクが高く、重度の感染症を引き起こす可能性があり、最悪の場合、死に至るケースもある。造血細胞移植患者や臓器移植患者、妊娠中に初回感染した母親から生まれた新生児では、リスクが非常に高くなる。
移植後1年間の全死亡数などからなる主要評価項目
HELIOS試験は、1:1無作為化二重盲検プラセボ対照試験。CMV抗体陽性の造血幹細胞移植患者514名が組み入れられ、造血幹細胞提供者と患者の適合度および造血幹細胞提供者のCMV抗体の有無によって層別化し、移植後1年間評価した。
主要評価項目の移植後1年間の全死亡数とCMV感染症の発現率からなる複合評価項目、副次評価項目の移植後1年間のCMV血症の初発までの期間について、ASP0113の有効性をプラセボとの比較により評価したが、いずれの評価項目においても有意差が認められなかったという。安全性プロファイルについて、同剤は忍容性に問題はなく、ワクチン群で最も多くみられた有害事象は局所部位反応だったとしている。
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・アステラス製薬株式会社 ニュースリリース