自覚的ストレスとその変化、全がん罹患リスクとの関連検討
国立がん研究センターは1月20日、自覚的なストレスレベルが高いと全がんで罹患リスクが高くなり、その関連は男性で強くみられることがわかったと発表した。この研究は、国立がん研究センター社会と健康研究センターと、全国11保健所や国立循環器病研究センター、大学、研究機関、医療機関などとの共同研究で実施されたもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。
これまでの研究から、ストレスはさまざまな病気のリスク要因であることが示唆されているが、そのメカニズムは解明されておらず、がんとの関連についても研究が進んでいない。その理由として、主観的な情報であるストレスの程度を測定することが難しいことが挙げられる。また、慢性的なストレスは、一時的なストレスよりも、生理的影響や行動パターンへの影響も大きく、病気のリスク要因となることが示唆されているが、慢性的なストレスの影響を考慮した研究は少ない。
そこで研究グループは、自覚的ストレスおよび自覚的ストレスの変化と、全がん罹患リスクとの関連を検討したという。
男性で関連強く、肝がん・前立腺がんでリスク上昇
研究グループは、1990年と1993年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内(呼称は2017年現在)に在住だった人のうち、がんになっていなかった40~69歳の男女約10万人を、2012年まで追跡した調査結果にもとづいて、自覚的ストレスとがん罹患との関連を調査。その結果、追跡調査中(平均17.8年)に、男女計1万7,161人のがん罹患が確認されたという。
調査開始時のアンケートの回答から、日常的に自覚するストレスの程度について「低・中・高」の3つのグループに分け、その後の全がん罹患を比較。自覚的ストレスレベルが「低」のグループを基準として、それ以外のグループのがんリスクを比較した結果、調査開始時の自覚的ストレスレベルと全がん罹患との間には、統計学的有意な関連は見られなかったとしている。
画像はリリースより
さらに、対象者のうち調査開始時と5年後調査時のアンケート両方の回答者7万9,301人について、自覚的ストレスに関する回答の組み合わせから、その変化を「常に低、常に低・中、常に中、高が低・中に変化、低・中が高に変化、常に高」の6つのグループに分け、がん罹患リスクとの関連を検討。その結果、1万2,486人(男性7,607人、女性4,879人)のがん罹患が確認され、常に自覚的ストレスレベルが高いグループは、常に自覚的ストレスレベルが低いグループに比べ、全がん罹患リスクが11%上昇していたという。その関連は男性で強くみられ、罹患したがんを臓器別にみると、とくに、肝がん・前立腺がんで自覚的ストレスが高いとリスクの上昇がみられたという。
研究グループは、今回の結果について「あくまでひとつの基礎的な医学論文による報告であり、そのまま広く応用できるという段階のものではない」としている。応用のためには、ガイドラインを参考に、性別、年齢、ライフステージなどの背景に応じて、健康に良い面と悪い面のバランスを考えた上で生活に取り入れるというステップが必要としている。
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・国立がん研究センター プレスリリース