水分蒸発の防止や感染防御に重要な涙液に存在する脂質
北海道大学は1月18日、涙液中の脂質の炭素鎖長が短いマウスを作成し、脂質の長さがドライアイ防止に重要であることを解明したと発表した。この研究は、同大北海道大学大学院薬学研究院の木原章雄教授らの研究グループによるもの。研究成果は「FASEB Journal」に掲載されている。
涙液は脂質層(油層)、水層、ムチン層の三層から構成されており、最も外側にある脂質層は水分蒸発の防止や感染防御に重要だ。涙液に存在する脂質はマイバムと呼ばれる鎖のような分子で、主成分はコレステロールエステルとワックスエステルであり、マイバムの炭素鎖長はC20-C34(炭素の数が20~34個)と極めて長い。
ELOVL1遺伝子欠損マウスでは短いマイバムが増加
研究グループは、脂肪酸の鎖長を伸ばす酵素であるELOVL1の遺伝子(Elovl1)が表皮以外で欠損したマウスを作成。このマウスの目は若齢期でドライアイになり、5か月齢以降では角膜が混濁したという。また、このマウスではC25以上の長さを持つマイバムが減少し、代わりに短いものが増加していた。これらの結果から、ドライアイを防止するためには涙液脂質の長さ、つまり「質」が重要であることが初めて示されたとしている。
画像はリリースより
ドライアイの原因の約8割が脂質層の異常(マイボーム腺機能不全)であるにも関わらず、脂質層をターゲットにした薬剤は存在しない。今回の研究成果によって、極長鎖マイバムがドライアイ防止に重要であることが明らかとなったことで、極長鎖マイバムの産生または分泌を増やす薬剤や極長鎖マイバムを含んだ目薬など、ドライアイを治療・予防する新しい薬剤の開発につながると期待される、と研究グループは述べている。
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・北海道大学 プレスリリース