乳児期早期より重度精神運動発達遅滞などを呈する難病
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は1月18日、有馬症候群の原因遺伝子を世界で初めて発見したと発表した。この研究は、NCNP神経研究所疾病研究第二部の伊藤雅之室長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Brain and Development」オンライン版に掲載された。
有馬症候群は、1971年に国立精神・神経医療研究センター病院名誉院長の有馬正高が世界で初めて報告した疾患。乳児期早期より重度精神運動発達遅滞、先天性視覚障害、嚢胞腎(ネフロン癆)、眼瞼下垂、小脳虫部欠損、下部脳幹形成異常(MTS)を呈し、進行性の腎障害を併発し、腎不全のため腎透析ないし腎移植を要する。これまでに、国内での報告は31例のみの稀少性の高い難病で、常染色体劣性遺伝性疾患と考えられている。
CEP290の遺伝子変異を発見し一次繊毛異常を明らかに
研究グループは、2014年に有馬症候群の疫学調査を行い、7例の臨床的特徴と診断基準を発表。このうちの3家系4例の患者および家族のDNAの全エクソーム解析を行った。その結果、一次繊毛の基底小体を構成するcentrosomal protein 290kDa(CEP290)遺伝子のイントロン17と43の両方、もしくはいずれかの遺伝子変異があることがわかり、一次繊毛の構造異常を起こすことを発見。これらのことから、有馬症候群の病因性遺伝子と患者細胞における一次繊毛異常を明らかにしたとしている。
CEP290遺伝子は、54個のエクソンを持ち、その産物は2,479個のアミノ酸からなる分子。今回見つかった遺伝子変異はいずれもスプライス異常をきたし、異常な構造のCEP290タンパク質が作られ、破壊されているものだという。CEP290は、一次繊毛の根元の基底部にあり、基底小体と複合体を作り繊毛内の物質輸送に関与している。この働きができないことで病気になることが考えられるという。また、イントロン43のスプライス・アクセプター・サイトに見つかった変異は全例に共通していたことから、有馬症候群の発症に重要な遺伝子異常であることが推察されるとしている。
有馬症候群は、ジュベール症候群関連疾患の重症型と考えられている。これらの疾患は、すべて一次繊毛の構造に関与する分子の遺伝子異常に起因する。今回の発見は、こうした難病の発症メカニズムの解明に寄与することが期待できる、と研究グループは述べている。
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・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース