ほとんど行われていなかった最初期石灰化に特化した検討
岡山大学は1月17日、運動で生じる関節部分の細胞破裂が骨の形成に関与するという、骨形成の新たなメカニズムを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科(歯)生体材料学分野の原エミリオ助教、松本卓也教授、大阪大学の共同研究グループによるもの。研究成果は米科学雑誌「ACS Biomaterials Science & Engineering」、英科学雑誌「Integrative Biology」のオンライン電子版に掲載されている。
画像はリリースより
これまでの骨化に関する研究では、骨ができあがって行く過程、特に最初期石灰化に特化した検討はほとんど行われていなかった。また、初期石灰化の世界的なコンセンサスは、これまで軟骨細胞や骨芽細胞などから放出される基質小胞とよばれる小胞が石灰化発生の場であると考えられていた。
研究グループはこのあまり検討されていない部位や時期を、分子生物学的アプローチと形態学的アプローチ、さらに工学的アプローチといった複数のアプローチで検討したという。
破裂した細胞膜の断片が初期石灰化の核に
研究グループは今回、骨形成初期に着目し、マウスの大腿骨骨頭部分の石灰化初期を詳細に検討した。その結果、発生初期にこの部分のほとんどを占める軟骨細胞が次第に肥大化し、ある時期に部分的に破裂することを発見。破裂の結果生じたスペースの形態が初期の石灰化形態と一致していることを確認した。
また、このスペースに残された破裂した細胞膜の断片が初期石灰化の核となっていることが判明。さらに、この軟骨細胞の破裂は、歩行などの機械的刺激により誘引されていることも見出したという。
今回の研究により、適度な運動の結果生じる関節部分の細胞破裂が正常な骨形成に関与していることや、細胞膜断片が骨石灰化の起点であることが明らかになった。研究グループは、「骨の成長に適した環境の理解や新しい骨再生材料の開発につながる」と述べている。
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