不明だった「食べ分け」のメカニズム
生理学研究所(NIPS)は1月17日、脂肪と炭水化物の食べ分けを決定する神経細胞をマウスで発見したと発表した。この研究は、同研究所の箕越靖彦教授と、琉球大学第二内科(内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座)の岡本士毅特命講師(元生理学研究所)らによるもの。研究結果は、米科学雑誌「Cell Reports」オンライン版に掲載された。
3大栄養素である炭水化物、脂肪、タンパク質は、体内での役割が異なるため、ヒトや動物は食物を食べ分けることによって、これらの栄養素を必要に応じて食物から摂取している。しかし、ヒトや動物が、どのようなメカニズムによって食物を選択し、摂取するかはわかっていなかった。
CRHニューロン活性で炭水化物への嗜好性が亢進
今回、研究グループは、マウスを1日絶食させた際、視床下部室傍核から分泌される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)を産生する一部のニューロンにおいて、AMPキナーゼが活性化することを明らかにしたという。
画像はリリースより
また、CRHニューロンとAMPキナーゼの活性を人工的に変化させると、CRHニューロンがAMPキナーゼによって活性化し、炭水化物に対する嗜好性を亢進させることが判明。食物の種類による違いを調べるため、タンパク質など他の成分は同一にして、コーンスターチからショ糖、ラードからココナッツオイルなど炭水化物や脂肪の種類を変更しても、結果は同じであったという。
これらの結果から、このCRHニューロンは、AMPキナーゼによって活性化する特別なニューロンであり、活性化すると炭水化物の嗜好性を変え、脂肪と炭水化物のどちらを選ぶかを決定するニューロンであることが判明したとしている。
高度肥満者は、脂肪食を好んで摂取することが知られている。これまでは、「美味しい」食物をより好むことが原因だと考えられてきたが、炭水化物と脂肪の食べ分けを決定する神経細胞が発見されたことによって食物の嗜好性を決定する神経回路が明らかになり、高度肥満者が脂肪食を好む原因も明らかになると期待される、と研究グループは述べている。
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