■認定制度発足、点数化も視野
日本核医学会は、放射性医薬品の調製や品質管理に精通した薬剤師を養成するため、「核医学認定薬剤師制度」を立ち上げた。PET検査に用いる院内製剤の放射性医薬品の品質検査と共に、悪性リンパ腫治療薬「ゼバリン」、前立腺癌治療薬「ゾーフィゴ」等の核医学治療薬の登場を受け、放射性医薬品の取り扱いに詳しい薬剤師の関与が求められてきた。こうした背景から、取り扱い経験のある薬剤師を認定することで、放射線や放射性医薬品に対する理解を深めることを目指す。将来的には、医療現場での薬剤師の業務実績をもとに、診療報酬上の評価につなげたい考え。5月頃に認定薬剤師の第1号が誕生する予定だ。
甲状腺癌の放射性ヨウ素内用療法やPET検査等の核医学診療は、全国約1200施設で年間約170万件が実施されているが、必ず放射性医薬品が必要となる。一部は院内製剤として調製されるため、医療機関が品質確保をしなければならず、医療法施行規則は核医学施設に放射性医薬品の調剤等を行う準備室の設置を求めている。
ただ、これまで放射性医薬品の調製は、処方箋が発行されないため、医師の指導下で診療放射線技師が調製することが多かったが、院内製剤の品質確保には無菌的な調製が求められることから、無菌手技に習熟した薬の専門家である薬剤師の関与が求められていた。
同学会は、2011年に「放射性医薬品取り扱いガイドライン」をまとめ、核医学診療に使われる放射性医薬品の調製は薬剤師が行う必要があるとの考えを打ち出した。医療機関の管理者が薬剤師の中から放射性医薬品管理者を指名し、安全確保業務に薬剤師が関与する方向づけも行った。
同年には、甲府市の病院で放射性医薬品の過量投与問題が発覚し、診療放射線技師が放射性医薬品の調製を行っていたことが明るみに出て、放射性医薬品の管理に薬剤師の関与を求める機運が高まってきた。
また、08年にインジウム111で標識した悪性リンパ腫治療薬「ゼバリン」、16年にラジウム223で標識した骨転移のある前立腺癌治療薬「ゾーフィゴ」等の核医学治療薬が登場し、投与量の厳格な管理に薬剤師の関与が必要とされている背景もあった。
こうした状況を受け、同学会は、放射性医薬品の調製、薬物動態、品質管理等に精通した薬剤師を養成すると共に、取り扱い経験の豊富な薬剤師の立場を向上させていくことが必要と判断し、認定薬剤師制度を立ち上げた。
認定を取得するためには同学会の放射性医薬品取り扱いガイドライン講習会に参加し、試験に合格、修了証の発行を受けていることや過去3年間の放射性医薬品の取り扱いで所定の単位を取得していることなどの要件を満たす必要がある。具体的には、認定申請には15単位が必須で、年間30製剤の製造、調製、品質検査で10単位、年間50製剤で15単位を取得できる。2月から募集を開始し、5月頃には第1号の認定薬剤師が誕生する予定だ。
同学会核医学認定薬剤師制度小委員会の間賀田泰寛委員長(浜松医科大学光尖端医学教育研究センター教授)は「薬剤師が核医学領域で職能を発揮できる部分はもっとある」と指摘。「医療の中の放射性医薬品を正しく理解してもらい、核医学診療の実施施設では責任を持って薬剤師に管理してほしい」と期待を寄せる。
現在、病棟業務の拡大や人員不足など、病院薬剤部を取り巻く環境は厳しいが、間賀田氏は「医療現場で放射性医薬品に関わっている薬剤師の業務実績について具体的なデータをまとめ、診療報酬上の評価につなげたい。新しい領域でもあるので、臨床現場の疑問から研究面でも盛り上げてもらえれば」と話している。