東北大学と日本トリムの共同研究
東北大学は1月9日、新規に開発した電解水を用いた透析システムが、慢性透析患者の生存期間を改善することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科附属創成応用医学研究センター・東北大学病院慢性腎臓病透析治療共同研究部門の中山昌明特任教授のグループが、株式会社日本トリムと共同で行ったもの。研究成果は、英科学誌「Scientific Report」(電子版)に掲載されている。
画像はリリースより
現在、国内の透析患者数は30万人を超えて年々増えており、国の医療費を増大させている。一般に、透析患者の生存期間は極めて悪く、心血管合併症が主な死因となっている。この合併症の原因には透析中に生じる生体内の酸化ストレスと炎症が関わっていると考えられているが、現状、これらの要因を安全に抑える手段はなかった。
東北大学と株式会社日本トリムは、水の電気分解によって生成される電解水が生体内で酸化ストレスを抑えることに注目し、電解水の透析治療への応用を目指し2006年より共同研究を行ってきた。
電解水透析群でイベント発生が41%低下
今回の研究では、慢性透析患者の生存期間に対する電解水透析の影響を明らかにすることを目的とし、5年間の多施設共同臨床研究を実施したという。国内7施設の慢性血液透析患者を対象に、患者は非盲検オープンスタイルでそれぞれの治療法(電解水透析群161例、通常透析群148例)に割り付けられ、死亡および心血管合併症(うっ血性心不全、虚血性心疾患、脳卒中、虚血による下肢切断)といったイベントの発生を測定結果とし、5年間の臨床経過が観察された。
その結果、透析自体の臨床的効果・安全性に両群間に違いは見られなかったが、電解水透析群では透析後の高血圧の改善、必要な1日当たりの降圧薬の投与量の減量が観察されたという。また、平均観察期間3.28年の間に91件のイベントの発生を確認(電解水透析群41件、通常透析群50件)。死亡数および心脳血管病の発症リスクが、従来の標準的透析治療と比べて41%抑制されたことを確認したとしている。
今回の研究によって、電解水血液透析が慢性透析患者の心血管病を抑制し、患者予後を改善する可能性が示された。研究グループは、「従来の血液透析療法が抱える高い死亡率や心血管合併症の発生に対して、電解水透析が新たな解決手段となる可能性が示された」と述べている。
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・東北大学 プレスリリース