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抗体治療で脊髄損傷により失われた手指機能の回復を促進-京大

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2018年01月12日 PM12:30

運動機能回復の中でも極めて難しい手指運動機能の再建

京都大学は1月9日、サルを用いて脊髄損傷により傷ついた神経の再生を促し、一度失われた霊長類の手指機能を回復促進させる抗体治療に成功したと発表した。この研究は、同大霊長類研究所の中川浩研究員(現University College London研究員)、高田昌彦教授、大阪大学山下俊英教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Cerebral Cortex」に掲載されている。

脊髄には脳と手足の筋肉とをつなぐ神経線維があり、大脳からの運動指令を手足に伝えている。交通事故、スポーツ事故や転落などにより脊髄が傷ついてしまうと脳からの指令が適切に筋肉に運ばれなくなり、手足に麻痺症状が出現する。脊髄損傷は、中枢神経障害後の運動機能回復の中でも手指運動機能の再建は極めて難しく、日常生活レベルで必要とされる手指の器用さの再獲得は厳しいのが現状だ。

これまでの研究で、霊長類では脊髄損傷後も時間が経つとある程度の手指運動機能回復がみられること、さらにわずかながら一度損傷を受けた神経軸索から軸索枝が損傷部位を越えて伸長・分岐するという現象が確認されている。また、げっ歯類を用いた研究でも中枢神経が再生しにくい原因が少しずつ明らかにされてきたが、未だ有効な治療法の確立には至っていなかった。

RGMa抗体治療が神経軸索の再生力、運動機能の回復を促進

今回の研究では、Repulsive guidance molecule-a(RGMa)というタンパク質に着目。ヒトと類似した神経回路構造をもつ霊長類を対象として、抗RGMa抗体を用いて脊髄損傷後、損傷周囲部に増加するRGMaの作用を阻害し、その神経軸索の再生力や運動機能回復に対する効果を検討した。


画像はリリースより

まず、片側の手指に麻痺症状が出現するように脊髄を損傷させ、その後14週間にわたり手指の器用さが回復する過程を解析。抗RGMa抗体は、脊髄損傷直後から4週間損傷周囲部に持続投与した。治療効果を明らかにするため、RGMa抗体投与群、対照群(疑似抗体を投与)を比較検討したところ、RGMa抗体投与群は対照群に比べて顕著な運動機能回復が観察された。また、行動解析後に皮質脊髄路を神経トレーサーで可視化し、神経軸索の再生能力を損傷部以下の領域で確かめたところ、RGMa抗体投与群は対照群に比べてより多くの神経軸索枝が観察され、それら神経軸索枝は、脊髄運動ニューロンや脊髄介在ニューロンと直接結合していたという。

これらの結果、霊長類において脊髄損傷後のRGMa抗体治療が神経軸索の再生力および運動機能の回復を促進させる有用な手段のひとつであることがわかった。今後、運動機能回復を促進させる治療手段や運動機能回復に伴う職業・社会復帰向上の一助となることが大いに期待される、と研究グループは述べている。

 

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