医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > インフルエンザウイルスが子孫ウイルスに遺伝情報を伝える仕組みを解明-東大ら

インフルエンザウイルスが子孫ウイルスに遺伝情報を伝える仕組みを解明-東大ら

読了時間:約 1分35秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年01月10日 PM12:40

8本のRNAをゲノムとして持つインフルエンザウイルス

東京大学は1月5日、インフルエンザウイルスが子孫ウイルスに遺伝情報を伝える仕組みを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授、京都大学ウイルス・再生医科学研究所微細構造ウイルス学の野田岳志教授、米国ウィスコンシン大学らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学雑誌「Nature Communications」で公開されている。


画像はリリースより

インフルエンザウイルスは8本のRNAを遺伝情報()として持つ。しかし、8本に分かれたRNAがどのように子孫ウイルス粒子に伝えられるか、その仕組みの詳細は明らかにされていなかった。

研究グループは先行研究で、電子顕微鏡解析により、8本のウイルスRNAが、1本のRNAを中心に7本のRNAが囲むような「1+7」という特徴的な配置に集められ、子孫ウイルス粒子に取り込まれることを明らかにしている。しかし、ウイルスRNAが1+7の配置をとることの意義については明らかになっていなかった。

8本のRNAを1+7に集合させるステップが重要

研究グループは今回、次世代シークエンス解析と電子顕微鏡解析によって、子孫インフルエンザウイルス粒子の中に取り込まれているRNAを調査。その結果、通常の子孫ウイルス粒子には8本のウイルスRNAが1+7の配置をとって取り込まれていた。また、ウイルスRNA以外の感染細胞のRNAは、ほとんど取り込まれていなかったという。

また、リバースジェネティクス法を用いて、ウイルスRNAを1本欠き、7本しかウイルスRNAを持たない変異ウイルスを人工合成し、その変異ウイルス粒子の中に取り込まれたRNAを解析。その結果、7本しかウイルスRNAを持たない変異ウイルスにも、1+7に束ねられた8本のRNAが取り込まれていた。また、この変異ウイルスに取り込まれた8本目のRNAは、インフルエンザウイルスのRNAではなく、感染細胞に存在するリボソームRNAだったという。

今回の研究結果より、インフルエンザウイルスが子孫ウイルスにゲノムを伝えるとき、8本のRNAを1+7に集合させるステップが重要であることが判明した。さらに、ウイルスのRNAが足りないときには、1+7に集合させるために細胞のリボソームRNAを奪い取る仕組みを持つことが明らかになった。これらの成果は、ウイルスRNAの集合を標的とした新規抗インフルエンザ薬の開発につながることが期待される、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • RET阻害薬の肺がん治療抵抗性、HER阻害薬併用で克服できる可能性-京都府医大ほか
  • MRI・CT内で安全に針の姿勢変更等が可能な球状歯車型空圧モータを開発-名大ほか
  • 統合失調症の陰性症状に「間欠的シータバースト刺激」が有用と判明-藤田医科大ほか
  • 視覚障害のある受験者、試験方法の合理的配慮に課題-筑波大
  • 特定保健指導を受けた勤労者の「運動習慣獲得」に影響する要因をAIで解明-筑波大ほか