8本のRNAをゲノムとして持つインフルエンザウイルス
東京大学は1月5日、インフルエンザウイルスが子孫ウイルスに遺伝情報を伝える仕組みを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授、京都大学ウイルス・再生医科学研究所微細構造ウイルス学の野田岳志教授、米国ウィスコンシン大学らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学雑誌「Nature Communications」で公開されている。
画像はリリースより
インフルエンザウイルスは8本のRNAを遺伝情報(ゲノム)として持つ。しかし、8本に分かれたRNAがどのように子孫ウイルス粒子に伝えられるか、その仕組みの詳細は明らかにされていなかった。
研究グループは先行研究で、電子顕微鏡解析により、8本のウイルスRNAが、1本のRNAを中心に7本のRNAが囲むような「1+7」という特徴的な配置に集められ、子孫ウイルス粒子に取り込まれることを明らかにしている。しかし、ウイルスRNAが1+7の配置をとることの意義については明らかになっていなかった。
8本のRNAを1+7に集合させるステップが重要
研究グループは今回、次世代シークエンス解析と電子顕微鏡解析によって、子孫インフルエンザウイルス粒子の中に取り込まれているRNAを調査。その結果、通常の子孫ウイルス粒子には8本のウイルスRNAが1+7の配置をとって取り込まれていた。また、ウイルスRNA以外の感染細胞のRNAは、ほとんど取り込まれていなかったという。
また、リバースジェネティクス法を用いて、ウイルスRNAを1本欠き、7本しかウイルスRNAを持たない変異ウイルスを人工合成し、その変異ウイルス粒子の中に取り込まれたRNAを解析。その結果、7本しかウイルスRNAを持たない変異ウイルスにも、1+7に束ねられた8本のRNAが取り込まれていた。また、この変異ウイルスに取り込まれた8本目のRNAは、インフルエンザウイルスのRNAではなく、感染細胞に存在するリボソームRNAだったという。
今回の研究結果より、インフルエンザウイルスが子孫ウイルスにゲノムを伝えるとき、8本のRNAを1+7に集合させるステップが重要であることが判明した。さらに、ウイルスのRNAが足りないときには、1+7に集合させるために細胞のリボソームRNAを奪い取る仕組みを持つことが明らかになった。これらの成果は、ウイルスRNAの集合を標的とした新規抗インフルエンザ薬の開発につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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・東京大学医科学研究所 プレスリリース