再建手術を行っても機能障害や変形を残すことも
京都大学は1月4日、親指多指症における筋肉の発達は、親指の大きさや形に関わらず、親指が生じる位置で規則的に決まることを発見したと発表した。この研究は、同大医学部附属病院形成外科の齊藤晋講師らの研究グループによるもの。研究成果は、米形成外科学会の学術誌「Plastic and Reconstructive Surgery」に掲載されている。
親指多指症は、親指の隣にもう一つ親指が生まれつきできる病気。余剰な親指のできかたはさまざまで、正常に近い大きさや形の親指がしっかり関節を作っている場合もあれば、豆のような小さな組織がぶらさがっているだけの場合もある。これまで大きな親指多指症には解剖学的な問題があり、ぶらぶらした豆のような親指多指症には重要な解剖の問題はないと考えられてきた。
今日では、大きな親指多指症に対しては大学病院やこども病院などの専門機関で機能再建手術が行われているが、そのような治療を行っても変形や機能障害が残ることがあるため、病気の全容解明が望まれていたという。
豆のような親指でも機能障害が生じうる可能性
研究グループは今回、親指多指症の手のひらの筋肉に着目。これは、筋肉の発達障害は親指の運動機能の低下や変形を生じる原因となるためだ。研究では、さまざまな大きさや形態、結合状態の違う親指多指症を集めて、どのタイプの多指症にどのような筋肉の発達異常があるのかを調査した。
通常、筋肉はMRIなどで撮影することができるが、20分程度じっとしていないといけないため、赤ちゃんにはなかなか使えない。そこで今回、3次元超音波スキャナーを製作し、15秒で親指多指症の筋肉を撮影することに成功したという。
画像はリリースより
撮影の結果、筋肉の発達は、余剰な親指の大きさや形に関係なく、その親指が生じる「位置」によって規則的に低下することを発見。橈側(親指側)親指が尺側(小指側)親指の指先側から発生する多指症では筋肉は十分に形成されていたが、尺側親指の基部から発生する多指症では、位置が頭側になるほど筋肉の形成は不十分だったという。また、豆のような親指多指症でも、筋肉がやせていたり、欠損していたりすることが判明したとしている。
今回の成果はこれまでの親指多指症の概念を変えるものであり、治療法の発展に加えて発生のメカニズムを解き明かす上でも重要な発見。この成果をもとに、今後より機能的な再建手術法の開発を進めたい、と研究グループは述べている。
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・京都大学 研究成果