型間で病態の進行速度や障害部位が異なる緑内障のニコレラ分類
理化学研究所は2017年12月27日、眼底検査装置からの定量値を用いて、緑内障の視神経乳頭形状分類を客観的に行う機械学習モデルを構築したと発表した。この研究は、理研光量子工学研究領域眼疾患クラウド診断融合連携研究チームの秋葉正博チームリーダー、横田秀夫副チームリーダー(同領域画像情報処理研究チームリーダー)、安光州客員研究員、東北大学大学院医学系研究科眼科学教室の中澤徹教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、米科学雑誌「PLOS ONE」オンライン版に12月19日付で掲載されている。
画像はリリースより
緑内障の診療では、1996年にニコレラらが提唱した視神経乳頭形状に基づいたニコレラ分類が利用されている。ニコレラ分類には緑内障病態の重要な危険因子が含まれており、Focal Ischemia(FI)型、Myopic(MY)型、Senile Sclerosis(SS)型、General Enlargement(GE)型の4つがあり、型ごとに臨床的な特徴が異なり、型間で病態の進行速度や障害部位が異なる。そのため、緑内障専門医は、同分類により緑内障の病態を理解し、治療方針を決めている。しかし、これまではカラー眼底画像の医師の読影による主観的判断に基づいていたため、客観性がなかったという。
有効な特徴量を9個に絞り貢献度を定量化
そこで研究グループは、眼底検査装置からの定量値を用いて、視神経乳頭形状を客観的に識別する機械学習モデルの構築を試みた。緑内障専門医3名が、各症例がニコレラ分類のどのタイプに当てはまるかを判断し、分類結果の一致した緑内障163眼を対象とした。そのデータをランダムに2つのグループに分けて、114眼はトレーニングデータとして機械学習モデルの構築に用い、残りの49眼はテストデータとしてモデルの性能の検証に利用した。
定量値は、眼底の2次元断面を測定する光干渉断層計(OCT)、血流を画像化するレーザースペックルフローグラフィ(LSFG)、および電子カルテの患者背景情報から得られる各眼球の乳頭形状パラメータ、網膜神経線維層厚、乳頭血流パラメータ、背景情報など、計91個の情報を抽出。次に、トレーニングデータに対して、最大関連性最小冗長性特徴選択を適用し候補特徴量を作り、さらに、抽出した候補特徴量に対して遺伝的アルゴリズムに基づいた特徴選択法によって、最適分類性能が出る特徴量のサブセットを探した。なお、機械学習手法はニューラルネットワークを用いたという。
その結果、等価球面度数や陥凹面性、年齢など、ニコレラ分類を行うのに有効な特徴量を9個に絞り、貢献度を定量化することができたという。訓練されたニューラルネットワークにより、49眼のテストデータについて、ニコレラ分類の各タイプに当てはまる確信度を計算し、確信度の最も高いタイプを分類結果とした。これを緑内障専門医による分類と比較したところ、ニューラルネットワークの正解率は87.8%だったという。また、分類を間違った症例について確認した結果、同時に複数の型の臨床的な特徴を持っている症例であることが判明したとしている。
今回の成果について、研究グループは、「緑内障は複合的な因子を持つことから、本成果は、各症例に対して機械学習モデルによる確信度を提示することで、緑内障の客観的な臨床診断につながると期待できる」と述べている。
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・理化学研究所 プレスリリース