腕帯を巻くことが必要条件の従来の測定法には限界が
名古屋大学は2017年12月27日、腕帯(カフ)を必要としない血圧測定技術の開発に成功したと発表した。これは、同大大学院医学系研究科循環器内科学の室原豊明教授、坂東泰子講師、渡邊直樹大学院生による研究チームによるもの。研究成果は「Journal of the American College of Cardiology(JACC): Basic to Translational Science」電子版に12月25日付けで掲載されている。
画像はリリースより
およそ120年前に血圧という概念が発見されて以来、血圧測定は診察室で行われている聴診法や、現在の家庭血圧計に応用されているオシロメトリック法により行われてきた。血圧変化は脳心血管病発症の大きな原因となることが知られており、とくに家庭での自己測定血圧が重要視されている。
しかし、従来の測定法は、血圧を測定するために腕に帯状のカフを巻くことが測定の必要条件のため、これにより発生する入浴や運動などの生活シーンでの測定不能、カフ締め付けによる睡眠中の不快感や測定誤差の発生などの限界が指摘されていた。そのため、カフのない方法での血圧測定が可能になれば、今まで測定困難であった測定条件下で、血圧変化の「見える化」が可能となると期待されている。
全ての試験における精度要求を達成
今回の研究では、脈波から血圧を測定する技術である「カフレス血圧測定技術」が、実際に臨床応用可能な精度を有するかを検証。健常者ならびに循環器内科へ通院中、あるいは入院中の患者の血圧を、従来のカフ式ならびにカフレス式の同時測定によりデータ収集を行い、カフレス血圧値がカフレス血圧測定の世界標準規格であるIEEE標準規格(IEEE1708-2014)の要求する「安静試験」「血圧変動試験(上昇・低下)」「長期再現性試験」で精度を満たすかどうかを評価したという。
この試験条件の設定方法には先例がないことから、同研究ではIEEE1708-2014に準拠する、新たな評価方法を作成。検討の結果、カフレス血圧値は要求された全ての試験における精度要求を達成しただけでなく、入眠時のカフによる不快感を有意に軽減することが明らかになったという。
カフレス血圧計の開発は、ウェアラブルデバイスの開発に直結するため、重要な健康指標である血圧のさまざまなシーンでの「見える化」が可能となる。現在、日本に2000万人以上存在するとされる高血圧患者の脳心血管病予防だけでなく、介護の必要な血圧自己測定困難者の診察室外血圧測定が可能となり、遠隔医療システムの実現による予防医療への貢献などが期待される、と研究グループは述べている。
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