推定患者数120万~420万人、女性に多い変形性股関節症
京都大学は12月26日、立っている時の脊柱の傾きと脊柱の柔軟性低下が、変形性股関節症の進行に関わる要因であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の建内宏重助教、市橋則明教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際変形性関節症学会の学術誌「Osteoarthritis and Cartilage」に掲載された。
画像はリリースより
変形性股関節症は、股関節の痛みや可動範囲の制限、筋力低下などの症状がでる疾患。歩行や立ち座りなどの運動機能や生活の質にも大きな悪影響を与える。女性に多い疾患であり、国内の推定患者数は約120万~420万人とされる。
変形性股関節症は慢性進行性の疾患であることから、進行予防が重要。現在、骨形態の異常や遺伝的要素、年齢(加齢)、性別(女性)など複数の要因が疾患進行に関わることが明らかになっている。これらの要因は、リハビリテーションなどの運動によって変化できない。そのため、変形性股関節症の進行予防を目的としたリハビリテーションのターゲットを明確にすることができず、どのような運動が有効かは、よくわかっていない。
変形性股関節症で経過観察中の女性患者を対象に要因を探索
研究グループは、リハビリテーションの現場で一般的に測定・評価されている要因の中で、運動による改善が可能なものに着目し、その中から変形性股関節症の進行に関わる要因を探索。同大医学部附属病院整形外科で変形性股関節症と診断され、経過観察中の女性患者50名を対象とし、2013年4月~2015年3月まで研究を実施した。
立位姿勢の悪化は、立位での股関節に加わる負荷の増大を通じて股関節症の進行に影響することが考えられるという。また、立ち座りなど日常生活での各種動作は、股関節と脊柱が連動して動くことが多いため、脊柱の柔軟性が低下すると相対的に股関節での運動が増大し負荷が増えることが考えられるという。
現在、リハビリテーションによって変形性股関節症の進行を抑制できるという十分なエビデンスはない。しかし、立位姿勢や脊柱の柔軟性は、理学療法士の適切な指導のもと医療機関や自宅での運動によって変化させることが可能だ。今後、立位姿勢や脊柱の柔軟性の改善を手段とした変形性股関節症の進行予防を目的とした研究を実施することで、進行予防に有効なリハビリテーションの開発につなげていきたい、と研究グループは述べている。
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・京都大学 研究成果