腫瘍細胞のPD-1経路を介する抗腫瘍免疫応答の阻害を解除
MSD株式会社は12月25日、ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(抗PD-1抗体)「キイトルーダ(R)点滴静注20mgおよび100mg」(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))について、「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がん」に対する効能・効果を追加する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したと発表した。
キイトルーダは、T細胞に主に発現する受容体であるPD-1と、腫瘍細胞に発現するPD-L1およびPD-L2の相互作用を阻害する抗PD-1抗体。PD-1(受容体)に結合してこの受容体とリガンドとの結合を阻害することによって、腫瘍細胞のPD-1経路を介する抗腫瘍免疫応答の阻害を解除する。
同剤は、国内で根治切除不能な悪性黒色腫、PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫の効能・効果で承認を取得しており、2017年2月15日に発売を開始。また、米国を含む50か国以上で承認を取得しており、世界では650以上の臨床試験において30種類以上のがんの検討が行われている。
化学療法群に対して、死亡リスクを27%減少
今回の承認取得は、プラチナ製剤併用化学療法による治療中または治療後に疾患進行した局所進行性または転移性の尿路上皮がんの患者を対象とした国際共同第3相臨床試験「KEYNOTE-045試験」の結果に基づくもの。
同試験の結果、キイトルーダ群は化学療法群に対して全生存期間(OS)を有意に延長。主要評価項目の解析では、キイトルーダ群は化学療法群と比較して、死亡リスクが27%減少した(HR,0.73[95%CI,0.59-0.91],p=0.00224)。OSの中央値は、キイトルーダ群は10.3か月(95%CI,8.0-11.8)、化学療法群では7.4か月(95%CI,6.1-8.3)。12か月時点の全生存率は、キイトルーダ群43.9%(95%CI,37.8-49.9)、化学療法群では30.7%(95%CI,25.0-36.7)だった。
尿路上皮がんは、尿路上皮から生じる腫瘍の総称であり、膀胱がん、腎盂がん、尿管がんおよび尿道がんを含むが、尿路上皮がんのなかでも膀胱がんの占める割合が約95%となっている。日本での膀胱がんの推定総患者数(有病者数)は約6万6,000人、2015年の推定新規患者数(罹患者数)は約2万1,000人であり、罹患率は増加の一途をたどっている。根治切除不能な尿路上皮がんに対しては、全身化学療法が標準療法として行われているが、既存治療後に増悪した場合の選択肢は限られていた。
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・MSD株式会社 ニュースリリース