リンパ球細胞表面に存在するタンパク質分子CCR5
愛媛大学は12月21日、ヒト免疫不全ウイルスエイズ(HIV)感染治療薬の標的分子「CCR5」が骨の代謝も調節していることを解明したと発表した。この研究は、同大プロテオサイエンスセンターの李智媛助教、飯村忠浩教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Nature Communications」に掲載された。
リンパ球の細胞表面に存在するタンパク質分子のCCR5は、リンパ球の移動に関与する。HIVはこのCCR5を認識してリンパ球細胞に感染。CCR5遺伝子に欠損があるとCCR5タンパク質を作れないが、HIVに感染しにくいことが報告されている。
また、CCR5阻害薬は、HIV感染患者の延命に貢献しているが、同剤の長期服用が高齢化に伴う運動器疾患(ロコモティブ・シンドローム)にどのような影響を与えるかはわかっていなかった。
破骨細胞の骨吸収機能を阻害
研究グループは、培養したヒトの破骨細胞と骨芽細胞にCCR5阻害剤を投与。その結果、破骨細胞の骨を吸収する機能が阻害され、骨芽細胞の骨を作る能力には影響がないことが観察できたという。
画像はリリースより
また、CCR5遺伝子を欠損させたマウス(CCR5欠損マウス)の骨を観察したところ、骨の量は、遺伝的に正常な野生型マウスと大きな変化がみられなかった。さらに野生型マウスとCCR5欠損マウスにタンパク質「RANKL」を注射し、人為的に骨粗鬆症を誘発すると、野生型マウスは骨の量が減って骨粗鬆症になったが、CCR5欠損マウスの骨は減少しなかった。CCR5 欠損マウスの破骨細胞は、ヒトの細胞での観察同様に、骨を溶かす機能が悪くなっていたという。CCR5を阻害すると破骨細胞の機能が低下し、骨粗鬆症になりにくいと考えられるとしている。
今回の研究成果より、CCR5阻害薬の骨粗鬆症治療薬としての研究展開や、CCR5に関連する分子を標的に新しい運動器疾患治療薬が開発されることも期待される、と研究グループは述べている。
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・愛媛大学 プレスリリース