酵素LCATが生まれつきない難病
千葉大学は12月21日、難病「LCAT欠損症」患者を対象に2017年2月に実施した遺伝子治療法の6か月間の観察結果を発表した。この研究は、同大医学部附属病院の糖尿病・代謝・内分泌内科の横手幸太郎教授と岡山大学病院腎臓・糖尿病・内分泌内科の和田淳教授、千葉大学発のバイオベンチャー・セルジェンテック株式会社によるもの。
画像はリリースより
体内で善玉コレステロールを分泌するための酵素「LCAT」が生まれつき備わっていないLCAT欠損症は、過剰なコレステロールが体に溜まることで腎臓の働きが悪くなり、透析に至ることがある遺伝病。根本的な治療法はなく、これまで血しょう輸血、食事療法や薬物療法が試されてきたが、十分な効果は得られていない。
同大医学部附属病院が2017年2月に実施した遺伝子治療法は、体内から取り出した脂肪細胞にLCATを正常につくれる遺伝子を組み込み、再び体内に戻すことで、LCATが持続的に供給されるようになるというもの。患者自身の脂肪細胞を使った遺伝子治療法の実施は世界初だった。
同治療法の特徴として、脂肪細胞は寿命が長くがん化しにくいため安全性が確保できること、脂肪の移植は確立した治療法なのでリスクが少ないこと、自分の細胞を使用するため拒絶反応が起こりにくいことが挙げられるという。
6か月間の観察で安全性を確認
研究グループは、LCAT欠損症患者に対する投与の効果を6か月間観察した。その結果、観察した範囲では移植による安全性を確認。LCAT欠損によって障害されていた脂質代謝の改善を示唆する変化が持続して観察されていることが、千葉大学の研究チームとデータモニタリング委員会で評価されたという。
この治療技術により、酵素を持続的に補充することが可能になることから研究グループは、糖尿病、血友病、ライソゾーム病などの治療にも貢献したいとしている。また、今後は再生医療・遺伝子治療用細胞医薬品としての承認を目指し研究を進めていきたいとしている。
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