妊娠中の母親約7万5,000人と配偶者約4万人を調査
富山大学は12月12日、子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)により、妊娠期に魚を摂取した群とそうでない群を比べ、多く摂取している群の方が「抑うつ状態」の人が少ないことを明らかになったと発表した。この研究は、同大医学部公衆衛生学講座の浜崎景准教授らのグループによるもの。研究成果は、精神医学専門誌「Journal of Psychiatric Research」にオンライン掲載された。
画像はリリースより
エコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)とは、環境省が2011年にスタートさせた、全国10万組の子どもたちとその両親による大規模な健康調査。北陸では、富山大学が担当を務め、富山市、滑川市、魚津市、黒部市、入善町、朝日町の居住者を対象に調査が行われている。
これまで、魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を摂取すると、うつになりにくいと言われてきた。同大では既に、エコチル調査の追加調査から血中のEPA濃度が高い人ほど抑うつ状態になりにくい可能性があることを報告していた。妊娠中や出産後は、「抑うつ状態」になる女性が多くいることから、今回、エコチル調査に参加している妊娠中の母親約7万5,000人と、その配偶者約4万人について、魚を食べる量と「抑うつ状態」との関連を調査したという。
他の健康習慣の影響による可能性も
調査では、魚食の量に応じて「少ない」「やや少ない」「中程度」「やや多い」「多い」の 5グループに分け、解析。「少ない」群と比較して、ほかのグループで「抑うつ状態」になりやすかったかどうかを検討したという。
その結果、妊娠前期 「やや少ない」と「中程度」群で「抑うつ状態」になりにくかったことが判明。また、妊娠中後期においては 「やや少ない」「中程度」「やや多い」「多い」群で「抑うつ状態」になりにくく、出産後1か月では「やや少ない」「中程度」「やや多い」群で「抑うつ状態」になりにくかったことがわかったとしている。さらに、調査対象である母親の配偶者である父親においても、「やや多い」群で「抑うつ状態」になりにくかったことが明らかとなった。
今回の調査による結果はあくまで「魚を食べると抑うつ状態になりにくい」という可能性を示唆するものであり、「魚を食べていないから抑うつ状態になりやすいのか」あるいは、「抑うつ状態だから魚を食べていないのか」のかは明らかとなっていない。また、魚食習慣がある人は一般的に健康意識が高く、ほかの健康習慣の影響による可能性もある。
研究グループは、妊娠期における魚を食べる量と抑うつ状態に関する検証を、約7万5,000人で行ったのは世界で初めてであり、画期的な結果だ、と述べている。
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